マガジンワールド

「ブス恋♥母が強くなる理由。」 Vol.166

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第166回「母が強くなる理由。」

 
Hanako 1142号:ブスの瞳に恋してる♥

[ヤマザキマリの場合]
やまざき・まり/漫画家。イタリア在住。『テルマエ・ロマエ』は世界8カ国で翻訳。


育児をしていると、自分の開けてなかった扉を開けることが出来るんだなと思う時がある。

夏休みも終わりに近づいたある日曜日、妻が仕事で朝から夜中までいない時があった。

僕は折角なら息子・笑福との夏の思い出を作りたいと思い、二人で出かけることに。笑福、2歳2か月。

笑福を連れて向かった先は、池袋のサンシャイン水族館。夏に改装して、泳ぐペンギンを頭上に見ることが出来る天空のペンギンが人気。なにより笑福は魚を見るのが大好きだからだ。

まず行って驚いたのは、エレベーターが40分待ち。そして上についたらチケットを買うのに30分以上待つ。1時間近く並ぶわけだが、ありがたいことに、笑福は行列に並んでいても駄々をこねたりしない。

その間、笑福を飽きないようにしようと、持ち上げたり、ゲームしたりと時間をつぶす。結果、密着度も高く、こういう時間が結構大事だなと思った。

恋人とディズニーランドに行き、アトラクションの待ち時間を楽しく過ごせるカップルこそ長続きするなんて言う人もいますが、まさしくそれと同じだなと。

で、並んだ甲斐あって、水族館に入ると笑福はハイテンション。ただ、今、現在、笑福が一番好きな魚はクマノミです。クマノミを「ニモ」と言います。どの水槽を見ても「ニモは?」と言うのです。サメの水槽を見ても「ニモは?」。カニの水槽を見ても「ニモは?」。色んな海水魚が泳ぐ巨大な水槽を見ても「ニモは?」と言うので、なんか水槽の魚にだんだん申し訳なくなってくる。

そして水槽のお魚を見た後には、自慢の天空のペンギン。頭上のプールを泳ぐペンギンは確かにすごい。楽しい。しかも、屋外にあるため、ペンギンが泳ぐプール的な上には空が広がっている。

いや、見ていて気持ちいい。笑福もかなりテンションが上がる。来て良かった。

ただ、天空のペンギンの近くに数秒おきに水が噴き出る噴水のようなものがあるのですが、笑福が一番テンションが上がったのがこの噴水でした。こればかりは仕方ないですよね。こちらが感動してほしいものと子供の思いって違いますもんね。

子供のころ、毎年、地元の商店街の親と子供たちで夏の旅行に行っていた。僕ら子供にとっては毎年泊まるホテルや旅館にゲーセンがあるかどうかが大事。だけど親にとっては、そこがいい温泉かどうかが大事で、大人がテンションが上がることと子供は違うよなと、そんなことを思い出しました。

水族館を出て、そのあと、同じ池袋サンシャインに「ナンジャタウン」というテーマパークがあり、そこに「餃子スタジアム」という人気の餃子屋の餃子が一堂に集まっているフードテーマパークがあるのです。

10年以上前、僕と妻はテンションが上がりすぎて、二人で100個近くの餃子をたいらげて、帰りにとんでもなく餃子臭くなるという素敵なデートをしたことがあったのです。

その思い出の地に笑福と行きたいと思ったのです。笑福も餃子が大好きです。

入ると、前に来た時と景色は変わらず。大人気。比較的空いてそうな店。どこも5~10分ほどで出来上がる。だからその間に別のお店でも餃子を買うのです。笑福は迷子にならないように右手を握っていたのですが、水族館の疲れが出て抱っこを求めてきました。左手で抱っこして餃子を注文。

ここで困ったことが。フードコート的な席があるのですが、どこも埋まっている。どこか空きがないか探しまくると、父親と子供一人が座ってる席の横に空きがある。そこに僕が笑福を抱えながら座ると、父親が「?」という顔をしましたが、何も言ってきません。

そこから数分すると、その奥さんが餃子を持って来たのです。そうです。僕がゲットしたのは、その奥さんの席。だけどね、だったらそのお父さんが言ってくれればいいじゃないですか。

いつもだったら、「あ、ごめんなさい」とどくところですが、僕も笑福と餃子を食べる席をゲットしたいし、どくわけにはいかない。自分の、いや笑福のためにも。と、今まで自分の中にはないガメつさが出てきました。母親は相当睨んでいましたが、いや、何も言わなかったお父さんを睨んでくれと。

そして、僕らの餃子が出来上がる時間。笑福を一人座らせておくわけにもいかなかったので、自分の帽子をその席に置いてキープして餃子を取りに行きました。無事、席を奪還されることなく、そこに座ったのですが、ようやく出来上がった餃子を笑福に食べさせようとしたとき、笑福は寝始めてしまいました。

そこで思う。テーマパークとかに子供と二人で来ているお母さん。本当に尊敬します。見方が変わりました。

子供といると、今までない自分が出てくる。変化する。だから母親はどんどん強くなるんだな。


【今回の気づき】

テーマパークに子供と二人で来ているお母さんはすごい!



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)の 出産までをつづった『妊活ダイアリー From ブス恋』「ブス恋シリーズ1~4」が人気。初監督作(脚本も担当)となる映画『ラブ×ドック』は2018年全国ロードショー。


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