第113回「男か女か? 一緒に聞けた喜び。」
第113回「男か女か? 一緒に聞けた喜び。」
□妊娠16週目(12月27日)
妊娠してから16週目に入る。安定期と言うやつだ。
安定期に入った日、妻と家で「安定期、おめでとーーー」と言い合った。やっと安定期に入った。が、この週に健診に行ってるわけでもなく、妻が胎動を感じているわけでもないので、安定期に入ったという喜びはあるが、120%の気持ちで喜びを感じていられないのも事実。だけどとにかく、まずは、めでたい。
□妊娠16週目(12月29日)
戌の日。日本には古くから、妊娠5カ月目に入った最初の戌の日に、妊婦さんが腹帯を巻いて安産祈願のお参りをする風習があるとのことで、妻が村上と友達と一緒に水天宮に行き、お参りして腹帯を買ってきた。家に帰ってきて、腹帯を一緒に巻いた。妻は太っているため、妊娠してもお腹が出てきた感じがあまりなかったが、腹帯を巻くと、真ん中がポッコリと浮いた。そこに「存在している」ことを感じた。帯のおかげだ。帯よ、ありがとう。妻のお腹の中で元気に成長してることを願う2014年の年末。
□2015年 お正月
2015年、妻が安定期に突入したままお正月を迎える。
毎年旅行に行っていることが多いが、今年は出かけず家でお正月を過ごすことにする。
年明け早々のある夜、妻が出かけて戻ってきた。ソファーに座った妻は「さっきお店でご飯してる時にうんこ漏らしちゃったんだよね」と言った。トイレに駆け込み、とりあえずケツを拭き、ケツにティッシュを挟んで帰ってきたのだという。それをソファーに座って、まるでカフェでお茶でもしてるかのようにゆったりと話す。そんなゆったりと話している場合ではない。だってケツにはティッシュが挟まっている応急処置状態なんだから。
新年、さっそく妻が肛門をゆるめ、僕の顔をゆるめて笑顔にさせてくれる。さすがだ。なかなかほかの妊婦さんにはなさそうなお正月。
□妊娠19週目(1月21日)
妻が「お腹がポコポコって動くんだよね。これって胎動かな」と言った。
ここ数日の不安が消えた……と思ったのもつかの間。それは妻の大腸が激しく動き、便秘が解消。初めての胎動だと思ったら、便通だった。なんだよ! と思いながらも、妻の便秘がちょっと解消されたことに感謝することにした。
この日の夜、妻が寝ていてうなされている。やはり不安なのだ。背中や体をさすってあげる。
早くこの不安をぬぐってあげたい。
□1月23日(20週目)
20週目と0日、6カ月突入。正直、この日、病院に行くときはドキドキした。成長が止まっている気がしたのと、妻がうなされる日が続いてたので、ネガティブな「もしも」が頭をよぎる。だけど、僕の数百倍妻の方が不安だろう。不安を口に出さないようにして、笑顔に変換して病院に行く。
健診開始。「もし心音が聞こえなかったら」。その不安をかっ飛ばすように、心音が聞こえて、エコーで顔を見せる。妻の「よかったー」の声。しかも。先生が健診で「足が一本、二本。ん? 真ん中に小さい奴。男の子だね」と言ってしまう。そして「あ、言っちゃった」。
いっさいの盛り上げもない性別発表。だけど、そのここ数日の不安があった分、さらっとした発表が余計に嬉しさを演出する。そして、何より、夫婦で絶対「女の子だ」と思っていたから。根拠はないけど女の子だと思っていた。元気に産まれてきてくれれば男の子でも女の子でもどっちでも良かった。だけど女の子の気がしてた分、余計に驚く。
そして男の子だと言われて、実感がわかないが体の芯に新しい嬉しさの種をまかれた感じがして。
良かった。とにかく良かった。性別発表を一緒に聞くことが出来て同じ温度で驚けることは夫婦にとって宝だ。
□20週目(1月24日)
病院で健診して元気だとわかったことがきっかけだからか? 妻がお腹に「ぴょんぴょん」という感覚を感じると言った。大腸の便ではない。今回は。「ぴょんぴょん」と。これが妻の初胎動。
ドラマや映画だと、初胎動って「うわ、動いたーーー」とか言ってるからそういうものかと思ってたら、そうでもない。だけど、このわかりにくさが命の小ささを感じさせて、そして胎動がちょっとずつ大きくなっていくごとに、命の成長を感じさせるのだろう。
初胎動をくれた子供に感謝。