ブスの瞳に恋してる♥ 第135回「完テツで寝かしつけ」
妻が仕事復帰してから二度目のイッテQの海外ロケ。その間、妻のお母さんと僕で息子、笑福の育児をするわけですが、今回の大きな問題は、ラストの2日間、お母さんがどうしてもはずせない用事があり、栃木に帰ってしまう。僕一人で笑福と向き合わなければならない。妻はほぼ完全母乳で育てていて最近息子はミルク拒否、添い乳と言って母乳をあげたまま寝かせているため、当然ながら母乳のでない僕にとって、笑福と迎える二人の夜が一番の難関となったのです。
お母さんが帰ってから、昼から夕方までは笑福と二人でも全然問題ない。この数カ月は笑福と二人で過ごす時間も増えていたため、離乳食を食べさせ、ちょっと散歩し、お昼寝させて、あっという間に夕方。さあ、ここからが問題。僕はある作戦を考えていました。それは笑福もヘトヘトに疲れれば夜めちゃくちゃ眠くなるだろうと思ったわけです。そこで、伝説のサッカー選手ディエゴマラドーナの真似をする「ディエゴ」という芸人の出番。沖縄生まれの彼はとても根が明るく陽気な性格。夜、ディエゴに来てもらいました。子供大好きなディエゴは笑福を見てテンション上がります。そして笑福に近づいて自分が出来る限りの芸を見せて笑わせようとします。しかし、0歳児にディエゴマラドーナの物まねが通じるわけはなく、まったく笑わない。それどころかちょっと機嫌悪くなる。
ディエゴは小細工をやめて、ただたんにおもしろい顔をしたりしてみる。もう汗だくです。大人の全力、子供は好物です。笑福もようやく心を開き笑い始めました。部屋の中でディエゴや僕と追いかけっこをしたり、笑ったりしてかなりヘトヘト状態。お風呂に入れると、笑福はだいぶ眠い様子。それでも、まだ遊びたい気持ちを抑えられず、眠ることへの抵抗を見せたものの、夜9時くらいには僕の腕の中では眠ってくれました。
ここからが問題です。夜は妻が添い乳で寝かせていることが多いため、妻の体がないと安心しません。だから夜は僕の腕の中で寝たとしても、ベッドなどに置くと目を開けて泣いてしまう。背中スイッチの作動です。
僕はこの日のためにある技を考えていました。それは羽毛布団作戦です。僕が普段寝ている掛け布団は羽毛布団でふかふかです。このふかふか感は妻の体に似てるんじゃないかと思っていたんです。そこで眠りについた笑福の体をゆっくりゆっくり、羽毛布団の上に置いてみる。すると。作戦成功−−! 見事布団の上で寝てくれたのです。
あとは電気を消してお休みです。ディエゴとリビングで祝杯をあげました。ディエゴは酔っぱらって1時過ぎに帰りました。夜1時半頃。笑福の泣き声が寝室からしました。起きたのです。おむつを替えて水を飲ませる。30分ほど抱いていたらまた寝ました。そこから、またふかふか掛け布団作戦に……と思ったのだが。掛け布団の上に乗せて手を離すと10秒位して目を開けて泣き出す。まるで「バカな大人よ! 2回同じ手が通じると思うなよ」と言わんばかりに泣いてしまう。5回、6回チャレンジしたけど泣きやまない。
そこで次の作戦に出た。それは僕の腕の中で眠る笑福を、抱えながら僕が横になり寝るという作戦。これだったら僕も一緒に寝られる。ただ10キロ近くある子供の体が上に乗った状態は正直腰にダメージがでかい。でも、寝てくれるならいいと、僕は笑福を抱いたまま横になる。すると、寝てくれた。これで眠りについたのが深夜2時半頃だったろうか。そこから3時間ほど寝て、5時半頃、また笑福は起きて泣き出した。おむつを替えて水を飲ませて抱くと……僕の腕の中では寝る。再び願いを込めて掛け布団作戦。だが起きてしまう。続いて、僕の体の上で寝かせる作戦を実行してみるが、今度はこの作戦でもダメ。僕が横になった瞬間に起きて泣く。まるでその泣き声は「お母ちゃんいないんだから楽してんじゃねえよ」とでも言いたげだ。そこから1時間ほどかけてありとあらゆる作戦をやってみたが、僕の腕では寝ていても、僕が座るだけで起きて泣いてしまう。
朝6時を過ぎて。腰も痛い。だけど、笑福を抱いたまま、朝陽が昇りだしたときに僕は決めた。立って抱いたまま寝かせようと。そして頭の中にあるすべての邪念を捨てさり、「これは修行だ」とつぶやき、9時頃まで笑福を寝かせた。お坊さんの気持ちです。
そして9時過ぎに笑福は起きた。笑福にとっては新しい一日の始まりだが、僕にとってはつながっている。すがすがしい笑福の顔とは対照に僕の顔はやつれている。だが、不思議と邪念を捨てて次の日を迎えたことに清々しささえ感じるようになった。笑福は無邪気に笑っている。正直しんどかった。だが、世の中のお母さんたちは毎日これをやっているんだもんなと。母乳に頼れず泣いているお母さんも沢山いるんだもんなと思うと、母親という存在へのリスペクトがさらに増した。
僕の不安だった5日間は切り抜けた。この日から、笑福と僕の間の絆が太くなった気がした。僕に見せる笑福の顔の色が増えたのだ。笑福は僕を父親として認めてくれたのか? 親が子供を育てるのではなく、子供が親を育てるのだろう。