マガジンワールド

「ブス恋♥突発性発疹でわかったこと」 Vol.152

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第152回「突発性発疹でわかったこと」

 
イラスト・ヤマザキマリ


子供がいつかかかる病気だよと言われながら、ならなかった病気、突発性発疹(ほっしん)。急に熱が上がって、数日経ってから発疹が出てくる病気。妻はいつも息子の熱が上がると「来たか、来たか!?」と突発性発疹を怖がっていたのですが、息子・笑福は昨年の夏にRSウィルスにかかる病気で約一週間入院したので、正直「あれより大変なことはないだろ」と思っていたのですが、ナメていました。

月曜日の夜、笑福の体が熱いので熱を測ってみるといきなり8度を超えてました。だけど超元気。そのあと一気に40度。妻は「ついに突発性が来たんじゃないか?」と疑う。僕が「まだ決めつけるのやめようよ」と軽口を叩くと、妻はいつも読んで勉強している病気の本を僕の方に投げつけ「軽口の前に勉強しろよ」とでも言いたげな目で睨んできます。

翌朝、火曜日になり熱は40度のまま。妻が病院に連れて行くとやはり突発性発疹の可能性が高いと言われました。ここでとても大きな不安要素。妻が翌日の水曜日から『イッテQ!』のロケで5日間、フィンランドに行ってしまうのです。子供が高熱を出しているときに、海外に行き、寒中水泳のロケをしなければいけない。なんて仕事でしょう。妻はとにかく心配しますが、仕事に行かないわけにもいかない。育児と仕事のバランスで悩むお母さん達も沢山いると思いますが、まさに妻もそこに立たされています。

妻が出発する当日から、妻のお母さんが助っ人に来てくれたのですが、後ろ髪引かれまくりでロケに行く妻。僕は「大丈夫、大丈夫。お母さんもいるし」と言って見送りました。40度の熱が出てても、元気だし、本気で大丈夫でしょと思っていたんです。

妻がロケに行って初日。熱は40度ですが元気な笑福。が、この日の夜から熱が41度後半に突入し、さすがに寝ながら苦しそう。お母さんは元看護師。熱冷ましを与えると一旦は下がるけどすぐに上がる。元気なんだけど熱のせいで寝られない笑福をほぼ寝ずに看病するお母さん。さすが元看護師、スーパー体力あります。

妻がロケに行ってから2日目の木曜日。熱が出てから4日目に入り、まだ熱は40度。「もしかしたら突発性じゃない可能性もあるんじゃないか」と思い始め、病院に。僕の友達の子供もそうだったんですが、突発性かと思っていたら熱が一週間下がらず、川崎病という病気で入院したとか聞くので、連れて行ったんです。先生もそろそろ下がる頃だと思ってたけど、まだ下がらない状況を見て、「とりあえず土曜日まで様子を見て考えましょう」と。

熱だけとにかく下がってほしいと願っていたら、その日の夜、ついに8度近くに熱が下がり。翌日、金曜日には熱が7度台に下がり、体の発疹が出てきたのです。病名がわかることってまず安心出来ますよね。「突発性発疹なんだ」と思えたところで一安心。

と思ったのですが! 突発性発疹のおそろしいところは、ここからだったのです。突発性発疹は別名「不機嫌病」という人もいて、熱が下がって発疹が出始めると、とにかく不機嫌になるというのです。うちの息子は「笑福」と名付けただけあって、よく笑います。だから「うちの息子に限って笑顔が奪われることなんかない」と思ってました。「不機嫌病なんかにならない」と。でも見事に不機嫌病になったのです。

ご飯を食べようとしない、近くのものを投げる、奇声を発する。無意味にキレる。80年代に『積木くずし』というドラマがありました。中学生の娘が突如不良になり、家で家庭内暴力の限りをつくすという。そんなことすら思い出すくらい不機嫌。

一個だけ不機嫌がおさまる方法は抱っこかおんぶ。お母さんがずっとおんぶしてくれます。お母さんが漏らしました。「笑福君の笑顔はどこ行っちゃったのよ——」と。ブログのコメントにもありましたが、「突発性発疹は熱で心配してるときの方がまだ楽なんですよ」と。

金曜日に不機嫌病が始まり、土曜日、その不機嫌はもっとひどくなります。ただ、妻の妹が心配して自分の子供を連れてきたとき、なんと子供と一緒に遊んだ3時間はご機嫌がいいんです。「なんだよ———」と叫びそうになりましたが、子供が帰るとまた不機嫌大王。お母さんも僕もヘトヘト。

そして、日曜日、ようやく妻がロケから帰国。まだ発疹は消えず、妻もここで「不機嫌病」をようやく体験。笑福の豹変ぶりに驚いていましたが。おそらく突発性の不機嫌だけでなく、妻が5日間いないことへの寂しさも不機嫌にプラスされていたはずなんです。妻が帰ってくると同時に発疹も減り始め、笑顔が戻ってきた笑福。子供が笑顔でいることが普通でしたが、笑顔でいることが普通ではないというか、笑顔でいることに感謝しなきゃなと思えて。

今回、この突発性発疹を通して、すぐに色々な病気にかかる子供の育児をしながら働いてたりするお母さんに対してさらにリスペクトする気持ちが高まり、そして自分も子供の頃「不機嫌病」あったのかなと思うと、親への感謝もまた浮かんだり。子供の病気って、いろんなことを伝えてくれるんだなと。

あー、まだやってないノロウィルス、怖い!!


【今回の気づき】

病気は病気以外のことも伝えてくれる



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)との子育てもまる3年。長らくご愛読ありがとうございました。連載をまとめた『ママにはなれないパパ』が、絶賛発売中です!