「ブス恋♥夫婦間の『抜き方』」 Vol.156
鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第156回「夫婦間の『抜き方』」
驚きました。結婚記念日が3月10日だと知ったのも初めてだったし、結婚して49年目なんだってことに。姉も今まで親の結婚記念日を祝ったことなどないと思うのですが、昨年、父が癌になり、手術が成功した後も、今もまだ病と闘っている状況なので、今まで見過ごしていたことが気になったんだと思います。そこで調べたのでしょう、結婚記念日を。そしたら49回目。
僕らは結婚14年目なので、49回目なんて想像もつきませんが。なんだか親の結婚記念日を知った途端に3月10日という日がそわそわしました。49年前のこの日に父と母が結婚してなければ、僕は生まれてないわけです。となれば、僕は妻とも出会ってないし、息子、笑福とも会えてない。今、僕が人生を生きて、楽しいことも悲しいことも全て経験出来ているのは、父と母が3月10日に結婚してくれたからなんだと思うと、なんかそわそわするんです。よく「親に産んでもらったことを感謝しなさい」と言いますが、親の結婚記念日を知って、その日に立ってみると、自然と今まで思えなかった「ありがとう」が体から溢れてきます。来年、50回目のおめでとうを迎えた時に、また自然と「ありがとう」が体から溢れてくるのだと思います。
と、両親の結婚記念日を知ったところで、最近、夫婦について思ったこと。それは夫婦生活において「抜くこと」が大事だなと。
例えば、先日、こんなことがありました。妻が疲れて寝ている日くらい、笑福の朝ご飯だけでも僕が作りたいと思いまして。たまに作ります。僕が朝ご飯作っていたら、途中で妻が起きてきまして「ありがとう」と言ってくれます。
妻は笑福を着替えさせて、部屋の掃除をします。妻が掃除機をかけながら僕に何かを叫んでいます。僕はキッチン。声がよく聞こえない。この状況、夫婦で生活していると、よくあるんです。妻は自分が叫んだ声は全部聞こえているという設定なので、以前は、妻が叫んでいて、聞こえなかったら、僕が近づいていき聞きなおしていました。だけど、あまりにも聞こえている設定で叫んでいて、僕は僕で作業をしている時には、作業の手を止めて近づいていって、ついつい自分もムッとしながら「聞こえないんだけど」と言ってしまいます。そんな僕の一言が妻に火をつけます。妻からしたら家庭の中のことを沢山やっていて、その中でひとつくらい僕に頼みたいことがあって叫んでいる。それを聞こえないと、ついムッと言ってしまう僕に腹を立てててぶつかってしまう。こういうこと夫婦だと超あるある。だけど、こういう小さなひずみが積もっていくと大きなひびが出来ると思うんです。小さなことでぶつかった時ほど、そのことで一日中気になったりしますよね? それが夫婦なんです。
だからこそ、先日の朝、僕がキッチンで料理を作っている時に妻が僕に何かを叫んでいる時に、何を言っているかわかりませんでしたが、大きな声で言いました「は~~~い」と。
ここで「はい」ということは小さな嘘が発生しています。だけど、この時に、「聞こえると思って叫んでても聞こえてないんだよな」と思うよりも、「とりあえず返事しておけ」と思う方が、ネガティブな気持ちにならない。「は~い」と大きな声を出すと、自然とポジティブな気持ちになれる。で、料理作り終わった後に、妻に「さっきよく聞こえてなかったんだけど、何かな?」と聞くと、妻も教えてくれる。クリーニングについてのことでした。ここで妻が「さっき聞こえるフリしたでしょ?」とはならない。「は~い」というのは小さな嘘でもあるのですが、これが夫婦にとって「抜く」ことなのだと思いまして。
やはり違う親から生まれて育ってきた別々の大人が一緒に住んでいるわけですから。子供を授かって父親と母親になったとしても、そこは元々別々の人間なのです。それはこの先、何十年たっても発生することなんです。だって49年一緒にいる僕のお母さんだって、お父さんの性格のことでイライラしてることがある。
ってことはですよ、僕らだって、60歳になっても70歳になっても、声が聞こえた・聞こえてないとかで喧嘩になってる可能性あるんですよ。だからこそ、夫婦の生活の中で「抜く」場所を増やす。パンパンに膨らんだ袋に小さい穴を開けるような、そんな作業。大きな穴を開けると、それは袋として意味がなくなるので気をつけていかなきゃいけませんが。
僕らが結婚して49年たった時にはどんな夫婦でいられるのか? そんなことも考えると、また楽しみだったりする。そのためには「抜いて」いこう。