マガジンワールド

「ブス恋♥笑顔でフラグ通過」 Vol.158

鈴木おさむエッセイ ブスの瞳に恋してる♥ 第158回「笑顔でフラグ通過」

 
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[ヤマザキマリの場合]
やまざき・まり/漫画家。イタリア在住。『テルマエ・ロマエ』は世界8カ国で翻訳。


皆さんこの時期が来ると、一年が過ぎたな!と思うことはなんでしょうか?

一年間のフラグ。どこにフラグが立っていますか? クリスマスやお正月はもちろん、お子さんがいる方は、子供の運動会が来ると、もう一年かと思う方もいるようで。

僕の中での一年のフラグは、中目黒の目黒川沿いに桜が咲く時期です。結婚した当初、目黒川の近くに住んでいたので、結婚してから毎年、桜の下を妻と二人で歩くのが年に一度の恒例行事になりました。

なので中目黒に桜が咲くたびに「もう一年か」と思うようになりました。二人で毎年歩いていた中目黒の桜の下でしたが、一昨年は、妻が妊娠中。妊娠8か月近くで、お腹が大きくなってきた妻と桜の下を歩き「来年は、子供と3人で歩けますように」と願い、昨年は、息子・笑福と中目黒の桜の下を歩けることに感謝して、そして今年も妻と笑福と一緒に桜の下を歩くことが出来ました。

が、目黒川の花見に訪れるお客さんは年々増えていきます。露店の数も増えて、その楽しさも倍増しています。

今年の花見、目黒川沿いの桜の下を妻と笑福と3人で歩き始めてすぐに、焼き芋を食べている家族がいました。

それを見て妻が「あ! 焼き芋食べたい」と言いました。笑福も芋が好きなので、「笑福にも食べさせてあげたい」と。そこから目黒川沿いを歩きながら、妻は焼き芋屋の店を探すのに必死。目の前に花開く桜にまったく目が行ってない。「芋、芋、芋」です。だけど、なかなか見つからない。全然焼き芋屋がない。

妻は「なんで焼き芋屋がないんだよ~」とテンションが下がっていく。綺麗な桜が開きまくっているのにテンション下がる。

さすがに僕が「もう、芋は諦めて桜を見よう」と言うと、それでも「芋が食べたいよ~」と。諦めずに芋を探して歩く妻。

と、目の前にマスクをした男性が「大島さん」と話しかけてきた。横にお子さんを連れて歩く男性。見ると、それは、石田純一さん。お子さんと二人で目黒川の花見をしていたのだ。

石田純一さんを発見したのと同時に、もう一つ驚くべき発見が。なんと石田純一さんの手に焼き芋があるじゃないですか。あれだけ探し求めた焼き芋を石田純一さんが持っている。妻は「抱きしめたい」ほどの気持ちで「石田さん、それどこに売ってましたか?」と聞くと、石田さんは「後ろに戻って2ブロックを右に行くと売ってますよ。もうちょっと先にもあるんだけど、そっちは売り切れてるから」と教えてくれた。

っていうか、石田さん、めちゃくちゃ焼き芋に詳しくないっすか。なんすか、それ。焼き芋屋の教え方まで、ジェントルマン。不倫は文化だ! ではなく、「芋は文化だ」とでも言わんばかりの芋の詳しさ。

石田さんに教わった情報をもとに、妻と笑福と歩いていくと、確かにそこにあるじゃないか。

焼き芋屋さん。しかも安納芋の焼き芋。妻は僕の分も含めて二つ買う。正直、僕はさほど芋を食べる人を見てテンションが上がっていたわけじゃなかったのですが、一口食ったら「うま~~い」。安納芋の焼き芋、めちゃくちゃうま~~~い。

妻も食べて「うま~~~い」。そして笑福に一口あげると、体を揺らして喜んで、もう一口よこせとテンション上がる。僕ら3人。道端で座って、芋を食いまくる。芋を食べながら、気づくと桜が満開だ。

家族3人で焼き芋を食べながら花見をする。最高だ。そして芋を食べ終わり、再び花見に出発。芋で腹もいっぱいになったので、花見だけに集中すること3分。妻が「あ!!」と言いました。目の先には「五平餅」の露店が。妻が「食べたいーー」と叫ぶように言う。僕が「さっき芋食ったばっかりだからダメでしょ」と言うが「食べたい!」と駄々をこねる。息子より駄々をこねる。

なんかこういう光景見たことある。思い出した。一年前。妻が子供を抱きながら、五平餅を食べたいと駄々をこねた。まったく同じことが一年後に起こる。妻は五平餅を買い、食べる。

思い切り食らうその口には思い切り味噌が付く。これも一緒。去年と一緒。去年とちょっとだけ違うとしたら、僕の腕の中で五平餅を食う妻を見る笑福が去年より大きくなっていることと、笑福も妻の五平餅を食べたがってることだ。来年からは僕の腕を飛び出して、妻と一緒に五平餅を食べる側になっているだろう。

我が家の一年フラグ。花見。そして花見と芋と五平餅。来年は、そこに何かがまた増えているかもしれない。

なんだか世の中不安なことだらけ。戦争が起きるかもなんて本気で不安になるときが来るなんて思わなかった。来年の春に、またこのフラグを笑顔で過ぎることが出来ますように!!


【今回の気づき】

一年のフラグを笑顔で越えられることは当たり前ではない!



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)との子育てもまる3年。長らくご愛読ありがとうございました。連載をまとめた『ママにはなれないパパ』が、絶賛発売中です!