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第83回「有言実行できる大人になりたい」

ブスの瞳に恋してる
 
イラスト/ヤマザキマリ
イラスト/ヤマザキマリ
 
第83回「有言実行できる大人になりたい」

僕は色んなところで書いたり言ったりしてますが、「やる」と「やろうと思った」の間には大きな川が流れている。ダイエットも「やった!」と「やろうと思った」って全然違う。一日でもやったか。明日からやろうと言って一年以上引き延ばしになっていないか? 口にしたことを実際にやることってすごいパワーだ。

「今度、機会あったら飯でも」と言って「その機会っていつだよーー」と思ってる人、多いはず。まあ、僕もよく言ってしまうんだが、口にしたことを実際に有言実行出来る大人、少ないんですよね。
 
日本テレビの土屋敏男さんという方がいます。電波少年でお馴染みのあの方です。色んな芸人の前にダース・ベイダーのように現れて、色んな無茶をさせてきたあの人。50歳過ぎて金髪にした、やんちゃな大人。
 
森三中はデビュー直後からお世話になってます。僕は直接レギュラー番組とかでお仕事したことないんだけど、何かと話す機会があったりして交流があります。そんな土屋さん、僕と妻が結婚したときになんだかえらくおもしろがっていました。交際日0日の結婚だったりしたので、土屋さんは「おもしろい結婚だな」と興奮気味に言っていました。
 
その時に僕と妻に言いました。「この結婚はおもしろいからおさむと大島が結婚している限り、一日100円あげるから」と。すごい企画です。別にテレビで放送するわけでもないんだけどね。土屋さんが大島に口座を開くようにと言いました。本当に払うのかなとか思ってたんですが、半年ほどしたら、100円×半年分が振り込まれていました。つまり1万8千円近くです。
 
その半年後も100円×半年分振り込まれていました。
 
正直、1日100円払うこと自体が冗談だと思っていたので、一年間振り込まれたときには笑いました。かつては猿岩石をヒッチハイクで大陸横断させたり、なすびに懸賞生活させたり。芸人に体張らせてる男はちゃんと自分が口にしたことを実行するんだなと。
 
でも一年ほど振り込まれたあとは、振り込みがなくなりました。というか、こんなことで一年分もらえれば十分と思ってましたし。
 
ですが。それから3年ほどたったあと、妻が銀行に行き、口座を見ると、なんと土屋さんからまとめて10万円近く振り込まれていたんです。3年分一気に振り込まれていました。まだ覚えていたなんて。
 
なので土屋さんに会ったときに「こないだ3年分振り込まれてて笑いましたよ。ありがとうございます」と言いました。そしたら困った顔で「正直、こんなに長く続くと思わなかったよ」と言ってました。別に辞めたっていいんですよ。放送されているわけじゃないのに。だけど律儀に振り込んでくる男。
 
土屋さんは僕が作っている舞台をたまに見に来てくれます。そして、見終わった後に「お前は結婚してから本当に愛ってものを見つけたんだな」とうれしい感想を言ってくれたりします。結婚してから僕は作るものがかなり変わりました。妻から教わったこと感じたことなんかが特に舞台の脚本には出たりします。土屋さんはそれを感じてくれてるし、そこに対してすごくリスペクトしてくれる。
 
妻が24時間テレビのマラソンをしたときも、Twitterで熱い一言を呟いたりしてくれていました。直接言ってこないけど、どこか大人の目線で嬉しいことを言ってくれる。
 
そして、2013年冬。
 
妻からメールが。妻が銀行に行くと、なんとなんと。そうです。最後の振り込みから8年。また振り込まれていたのです。金額は、100円×8年。30万円。
 
道端歩いてたら後ろから切りつけられたかのようにビックリしたし、笑ったし。完全に忘れていた。1日100円。もういいのに。振り込まなくていいのに。なのに忘れた頃に振り込んできた。一体なぜ振り込み続けるのか? 簡単です。辞めたらおもしろい人間じゃいられなくなるって思っているんでしょう。そもそも1日100円という企画を言いだしただけでおもしろい。だけど実際に振り込んだ方がおもしろい。途中で辞めるより振り込み続けた方がもっとおもしろい。
 
最初に書いた言葉。「やる」と「やろうと思った」の間には大きな川が流れている。シャレで言った一言を徹底的にやり続ける大人。格好いいな。
 
土屋さんは、最初は冗談として僕らの結婚生活にお金を振り込み始めた。だけど、今は違う。僕と妻の結婚生活の幸せを願ってくれている気がする。神社に1日100円お賽銭入れに行くように。
 
僕も有言実行出来る大人になりたい。土屋さん、ありがとう。


今回の格言
有言実行できる大人は格好いい
一度決めたことをやり続けるのは難しい。「三日坊主」という言葉もあるくらいですから、続けられないほうが普通かもしれません。だからこそ、有言実行できる人はすごい! そんなすごい人の話は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!