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第97回「人生初の精子検査の結果は…?」

ブスの瞳に恋してる
 
イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ
 
第97回「人生初の精子検査の結果は…?」
妻と人生初の精子の検査に行った僕。精子の採取が終わり、いよいよ自分の精子の検査の結果を聞く時間。先生の待つ部屋に入っていくと、先生がパソコンをカチャカチャ。するとモニターに僕の精子が映し出されます。めちゃくちゃ動いてる。そこで結果報告。
 
まず運動率。これは問題ないと言われました。次に、結果が書かれている紙の「正常範囲・やや奇形・奇形」というところの「やや奇形」ってところに○がされていました。「奇形」って言葉にかなりドッキリします。
 
奇形精子が多いと、妊娠しにくいらしい。僕は「やや奇形」。自然妊娠が望めないわけではないが、あまり無理せずに体外受精に進んでもいいとは思うと言われました。そうか。自分の精子は「やや奇形」状態だったんだな。まあ、これって、調べた日の体調とかいろいろ関係するみたいですけど。ただ、知れて良かったなと。
 
そして一番の問題は、「量」でした。先生が「量、少ないね。通常の半分」と言ってきました。それを言われて気づくわけです。検尿と一緒で全部入れないほうがいいと思ってましたから。心の中で叫びます。「え? あれって、全部入れるの? 入れちゃっていいの?」と。でもね、そこで先生に言えないわけですよ。「全部入れると思わなくて、第二陣はティッシュに出してしまいました」とかね。格好悪いでしょ。
 
僕が黙っていると、先生が「もしかして緊張しちゃった?」と言ってきたので、ただただ無言でうなずきました。それを見てニヤニヤする妻。帰りの車で妻は僕に何度も言ってきました。先生の真似で「緊張しちゃった?」。
 
でも、嬉しかったのは、妻が「一緒に検査行ってくれてありがとう」と言ってくれたこと。お礼を言いたいのはこっち。自分の精子の状態を知れたわけですから。
 
ちなみに、検査終了後、先生から「一応、冷凍保存しておきますか?」と言われたので、精子の正常なものだけを取り出して冷凍保存してもらいました。
 
そんな人生初の精子検査から5カ月ほど経ち。妻は子宮筋腫の手術を終えて経過も良好。いよいよ妊活の体のメンテナンスを経て、次のステップ。子作りに至る作業ってやつですね。そこに入る直前、今度は、妻が筋腫の手術を受けた病院から「旦那さんの精子の検査、やっておきましょうか?」と言われました。前回の精子の検査の結果も書かれた紙を妻が見せると、あらためてもう一回やってみようということに。ただ、僕は直接病院に行くことが出来なかったので、在宅採取。家で精子を取ってから3〜5時間以内に病院に持ってきてくれれば検査が出来るというのだ。精子って空気に触れたら死んでしまうと思っていました。だから、そんなに生き続けるんだという精子の生命力の強さに感動。
 
で、妻が病院に行く当日。ベッドの横に、忘れないようにと置いてあった精子採取キット。と言っても、紙コップと容器。朝10時、妻が起きたばかりの僕の前に来て「精子お願いしまーーす」と。まるでファストフードのカウンターでお願いするようなポップさ。妻は朝ご飯を作るためにキッチンに消えていく。で、精子を採取しようと、ベッドの上で1人シコシコ作業を開始するわけです。
 
頑張ること15分。無事、カップに容器採取。キッチンにいる妻にその容器を渡しに行くとね、妻が「お疲れさまでーーーす」。なんか、人生で一番しっくりこない「お疲れさま」。
 
結婚したての頃、妻は男性がオナニーをすることが理解できなくて、僕がリビングでこっそりオナニーしてるのを初めて目撃してしまった時、妻はベッドで1人泣いてたんですよ。寂しさと怖さで。そんな妻が、オナニーで精子を採取してきた夫に「お疲れさまでーーす」と言うこの変化がね、なんかおもしろくもあり。
 
妻は僕の精子の容器を持ち、病院に行きました。そして2時間ほどすると電話が。その病院での検査結果。運動率76%。これは60%以上あればいいそうで、非常にいいそうです。そして、濃度というものがあり、それは3000。本当は4000以上あったほうがいいらしいので、ちょっと薄めということでしょうか。今回は、奇形とかそういうことは言われませんでした。おそらく病院によって検査の結果とか報告の仕方も違うのでしょう。そう考えると、精子の検査も、一つの病院だけじゃなく、いくつかでやった方が、自分の精子を立体的に見られるんだなと思ったり。なんか、今「立体的に見られる」なんてクリエイターっぽいこと言ったけどね。そして、その病院では、早めの人工授精をオススメします、とのこと。前の病院では体外受精だったけど、ここでは人工授精。
 
ちなみに、人工授精というのは、旦那さんの精子をお医者さんがスポイトのようなもので、膣の中に入れていくもの。体外受精というのは、卵子と精子を採取して、お医者さんの手により、受精させようというもの。なんか、この提案もお医者さんによって違うんだなと思いつつ。そういう意見の違いもまた勉強、そこから何をチョイスするかも勉強。
 
今回の2回の精子検査を通して分かったのは。妊活をするということは、さらに自分を知っていくこと。そして改めて妊活というのは奥さんのことだけじゃなく夫婦のことなんだと実感。現時点では、夫婦の絆が深くなっていることは間違いありません。
 
精子よ、ありがとう。


今回の格言
妊活とは、夫婦で自分自身を
気づいていくことである
「精子検査」をしたことのある男性ってどのくらいいるのでしょうか? そんな貴重な体験を2回もしたおさむさんですが、いろいろ学んだことや考えさせられることも多かったようで……。こんな「貴重な体験談」は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!



鈴木おさむ
すずき・おさむ/放送作家。妻・大島美幸(森三中)との子育てもまる3年。長らくご愛読ありがとうございました。連載をまとめた『ママにはなれないパパ』が、絶賛発売中です!