マガジンワールド


第100回「ただいま、タイミング法に挑戦中!」

ブスの瞳に恋してる

 
イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ

 
第100回「空から降りてくる赤ちゃんのために」
先日、妻と久々に僕の実家に帰りました。妻が芸人活動をしている時は、タイミングが合わずに、僕の実家に帰ることが出来なかったので、夫婦そろっては久々でした。

妻が妊活休業に入ってから車の運転をするようになったので、妻の運転で千葉県・南房総市の僕の実家まで約二時間かけて行きました。

妻が妊活休業に入ってからは、毎朝妻が作った朝ごはんを一緒に食べる時がいろいろとお互いのことを報告したり、話す時間。前よりは話す時間がぐっと増えたとは言っても、一日一時間とはいきません。妻の運転中、とにかく色んな話をしました。

飯の話、人の文句、飯の話、人の文句、飯の話。二時間、こうやって無駄話することって意外となかったなと思いました。電車や飛行機で旅に行くと、大体寝ちゃったり本読んだりして、意外と無駄話しないんですよね。だけど、妻が運転していたら話をするじゃないですか。

なんか、二時間夫婦でたわいもない話をすることって、実はちゃんとやってる夫婦いないんじゃないかなと思ったり。たわいもない会話から今の妻が見えたり。無駄話って、実は「夢太話(むだばなし)」と書いて、夢を太くする話じゃないのか? と勝手にいい言葉にしようとしたり。

で、実家に着いて、僕の両親に挨拶して、お墓参り行って。妊活休業に入ってからの妻は、母親になるという目線で日々生きています。そして、妻として僕の面倒を見るという目線でも生きています。芸人時代はそういう目線ではなかった。目線が変わると実家に帰って来ても違います。お墓参りしても、手を合わせて先祖に報告していることも違うだろうし。

なにより、妻は魚が嫌いで生魚とか食べられない。家であまり魚を焼いたりしたこともなかったけど、僕の朝ごはんを作るようになってからは、ほぼ毎日、何かの魚を焼いて出してくれます。だから、実家の近くのお魚の市場とか連れて行っても、前は興味0だったけど、今は旦那に食べさせるものとして見る。こんなにも変わるんだと驚いて。

そして、夕方、再び妻の運転で車に乗って東京に帰る。と思いきや、アクアラインが大渋滞。気付くと僕は20分ほどの眠りについていた。起きると、僕の眠りに誘われたのか、妻もあくび。これはまずいぞと、休憩するために海ほたるにIN。妻はロケで何度も行ったことがある海ほたる。僕も何度も行ったことはあるけど、妻と一緒に行ったのは初めて。何度も行った場所でも、妻と一緒に行くだけで、また僕の目線まで変わる。

ちょっと休憩するつもりが、目についたクレープに二人で「食べたーーーい」と叫び、一個のクレープを買い、二人で豚のように食べ合い、続いて、あさり焼きというタコやきのような食べ物を買って、二人で山賊のように奪い合い食べる。

腹を満たした後に、目に入ってきたのがプリクラ。しかもアナと雪の女王プリクラですよ。僕は妻と結婚するまでプライベートでプリクラやったことなかった。だけど、妻に初めてちゃんと教わって、プリクラのおもしろさに気付いた。だけど、ここ5年ほどは一緒にプリクラやってなく。だから久々に妻とやろうということに。

あのプリクラののれんのようなものを二人でくぐるのって、なんか、ラブホテルに入るような感じで、ちょっと照れるななんて、前には感じないことを感じたりして。

アナとエルサと一緒にうちのエルサこと美幸と僕でプリクラ。目や顔のラインはどれだけ修正したところで変わらないので、ノー修正で、僕がペンを持ち書きましたよ、「ありのままで」と。

出てきたプリクラ見て大満足。これで600円は高いだろと思いつつも、一つ気付いたことが。なんか妻の顔というか雰囲気が違う。女性っぽいといったら女性なので変なんだけどね。プリクラを通してそれに気付いたというか。

それから数日後。妻は雑誌でエッセイを書いているのですが、そこに書いてあった文章を見て、なぜプリクラを見て、なんか変化があったか分かりました。

妻は、ある本で、「赤ちゃんは空にいて、子供が空から親を選んで降りていく」というような素敵な文章を読んだらしく、だから見た目を女性らしくしようと思い、髪の毛を伸ばして、洋服も女性に見える服にしているのだとか。

そして、毎朝、空に向かって窓を開けて、前髪をあげて「お母さんはここだよー」と言っているらしい。降りてきてもらうために。

そんなことまったく知らなかった。妊活休業に入り、今までは全て芸人目線で生きてきた妻が、今は母親になる準備をしながら、女性としての目線で生きている。

よく、「変わる」と言うけど、「変わる」ためには「変える」ことが必要で、「変える」ためには色んな努力が必要なんですね。努力して変えようとするから、変わる、変われる。

そんな妻を見ていて、改めて、自分ももっと妊活している妻の夫として「変えなきゃ」と思ったりして。

変えよう。変わろう。


今回の格言
変わるためには変える努力が必要
「赤ちゃんは空にいて、子供が空から親を選んで降りていく」って、いい話。それに触発されて変わっていく妻も、その妻を見て「変えなきゃ」と思う夫もステキです。こんな「変わる&変える話」は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。