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ブスの瞳に恋してる♥ 第124回「煮物系はイケると思ったら……」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


父勉休業に入り、僕が出来ることをやろうと決めたこと、家の料理当番。毎日料理を作るという奥様のすごさが身に染みてる中、色々なことに気づいてます。

クックパッドを見て、色んな料理を覚えてる中、やはり煮物に頼ってしまう自分がいる。肉じゃが、かぼちゃの煮つけ。この二つは、クックパッドに醤油、味醂、砂糖などの分量の「黄金比」メニューが書かれているので、それを覚え、ちょっとアレンジを加えたら、かなりうまくなってきました。しかも、火の使い方。かぼちゃの煮つけは、強火で一気に加熱していくと、味が染み込んだ煮つけが出来る。家のキッチンで強火にすることにちょっと臆病になったりするのだけど、火の使い方一個でこんなに味が違うんだと知る。

覚えると、どうしても先発ピッチャーとしての登板が増えてしまう。週に一度は登板してしまう。そのことをブログに書くと、やはり週一に登板してしまうメニューが人それぞれあるみたいで、カレーが多かったのですが、中には「絶対一か月は同じメニューを食卓に出しません」と書いてた奥様も。すげー! 一か月同じメニューが出ないなんてすごすぎる。

クックパッドを見て、煮物系をどんどん覚えていくのだが、正直、水が何グラムで、醤油が大サジ何杯で、味醂が大サジ何杯かとかが頭の中でミックスされてしまう。そのたびにクックパッドを見て確認してしまうのだが、早く、それを見なくても体になじませたいと思う日々だったりして。

煮つけシリーズの中で、初めて里芋の煮つけを作った日。里芋の皮を剥くのにジャガイモの皮を剥く要領で、ピーラーで皮を剥いてみるが、うまく剥けず。何回も格闘してる中で、中指の皮をちょい剥きしてしまい、心が折れかかる。里芋で中指の皮を剥くなんて。

里芋は大好きな野菜。ジャガイモよりも柔らかくて粘り気があり、歯ごたえがいい。大好きなのに、こんなに下ごしらえに手こずるなんて。僕は下ごしらえがやっかいな野菜を「手こずり野菜」と名付ける。ブログの読者から、「里芋は一度茹でて、包丁で皮を剥くのがいいですよ!」と教えてもらい、覚える。

うまいなと思う野菜って、下ごしらえがちょっと面倒だったりするんですよね。例えば、オクラ。ちょい茹でしてヘタを切って、まな板に塩をまいて、オクラを転がして小さい毛を取る。オクラなんて一口ですよ。進撃の巨人の巨人が人間を口の中に入れるかのように、エイッと一口で食べていたのに、食べるまでに結構面倒なんだと気づく。それと同時に、今までは、自分の口に入るまで、そんな段取りを踏んでいたのだと知り、口に入れる瞬間、感謝するようになる。ちなみにですが、ブログで「皆さんが“手こずる野菜”はなんですか?」と聞いたところ、筍が上位になる。

家の料理当番になり、一か月もたつと慣れてくる。なんでもそうだが、人は慣れてきたころが一番危険だ。味付けのレパートリーも増えてきて、大体、何を入れればうまくなるかとかわかるようになる。ある日、買ってきた冷凍のむきエビ。それを調理しようと、むきエビとエノキとマイタケを入れて炒める。味付けは、雰囲気で、鶏ガラスープの素を入れて、めんつゆのもとを入れて、あと多少の味付けをして出来上がり。

そして食べてみた。そしたら。まずい! とてつもなくまずい!! なんだこれ!

料理にはおいしいとまずいがあるとして、真ん中に普通がある。家で作る料理って、おいしくはなくても、「普通」くらいにはなる。なかなか「まずい」にはならない。だけどまずかったのだ。とてもまずかった。まずいもの作るって逆に難しい。エノキとマイタケが調味料を吸いまくり、とてつもなくまずい。クックパッドならぬ、クックバッド!

そこで思う。これは妻に食べさせられない。なので、エノキとマイタケだけは一人で全て食べる。正直泣きそうになった。料理に慣れてきて調子こいたころに、こんな事故を起こした。しかもね、エノキもマイタケも、作ってくれた農家の方がいるわけですよ。作った方は出来ればおいしく味わってほしいと思ってるはずなのに。っていうか、自分がエノキとマイタケだったらね、作り手が調子こいて味付けして、まずい味付けにさせられて、作った本人に「まずい」と思って食べられるなんて。なんて罪作りなんだ。例えるなら、デザイナーが自分で作った服を着て、街中で笑われるみたいなものか?

泣きそうになってエノキとマイタケだけはたいらげてエビだけが残る。妻は、その残ったエビを食べて「大丈夫! そんなまずくないよ」と言ってくれる。その慰めの言葉が余計に辛い。やはり油断ってダメなんだと。仕事もそうだが、油断が成長を止める。

なんでもめんつゆに頼りがちになってた自分は反省して、しばらくめんつゆ禁止令を自分に出したりして。

そんな勉強の中、妻が最近嬉しいことを言ってくれる。「むぅ(僕)の作ったかぼちゃ、食べたいなぁ」と。失敗の中でも成長しているものもあるのだ。

叱ることも大事だが、褒める言葉は人を成長させる。そんなことを料理と妻から学ぶ。

これからはもっと人を褒めよう。そしてごめんね、マイタケとエノキ。


 
今回の格言

油断が成長を止める。
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鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。夫婦ふたりで仕事と育児をこなす。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1〜4。