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ブスの瞳に恋してる♥ 第142回「熱中症で妻重症」

イラスト・ヤマザキマリ
イラスト・ヤマザキマリ


2015年6月に息子・笑福を出産してから、妻は、風邪などひいても一日で治してきた。病気などにはほぼなることもない妻。母として自分の健康にとても気を遣いながら育児してきた妻でしたが、一歳になった息子・笑福を初めての海水浴に連れていった翌日、見たことない姿になったのです。

2016年春、僕の父が癌になりました。食道癌。夏になり、父の抗がん剤治療も無事終わり、ようやく元気になったということで、7月の最終日に、妻と息子、3人で僕の実家に行きました。千葉県・南房総市。家から海まで歩いて3分という場所です。

久しぶりに笑福を抱いた父はとても嬉しそうでした。癌経験者の人に言われたのですが、本当に些細な一言で励まされることがパワーになると。特に孫と会ったりすることで本当に力が湧くと。父は74歳。以前よりは痩せましたが、その腕でしっかりと息子を抱く。

生きててくれてよかったと心から思う。

その日はまさに猛暑。激晴れの中、妻と息子と一緒に3人でお墓参り。そして海に行きました。近くの海水浴場で笑福の初の海水浴体験。海パンにもなるオムツをはかせていざ行ってみると、波を見て怖がる息子。そして僕の体を絶対に離そうとしない。波打ち際に近づき、笑福の足を波に近づけようとすると、もう号泣。「やめろ~~! やめてくれ~~~」と言わんばかりに叫んで拒否。そのさまもまた可愛いのですが、笑福の人生初の海水浴はたった10分。足10センチで終了。

父の癌が完治して再発しないことを強く願って、実家を離れ東京に戻ってきたのが日曜夜。そして翌日。朝、僕が作った朝ご飯を半分以上残す妻。「なんかとてつもなく体がダルい」と言う。体がかなり張っている。昨日の帰省、かなり疲れたのか?

息子を保育園に連れて行ったまま、妻は日本テレビ『ヒルナンデス!』に。僕は仕事に。夕方一本会議を終えたところで、妻から電話。気づくと数分の間に10回以上の着信。何か起きないとこんなにしつこく電話してくるのはストーカーくらいだろう。電話すると妻は、かなり息を切らしている。「ダメだー。体が動かない。笑福の面倒が見れない」とかなり辛そうだ。こんなこと笑福が生まれてからなかった。会議をキャンセルさせていただき、そっこう家に帰る。

着いたのは夜6時前。家に入ると、妻がソファーの上で倒れている。もう一人では立てない状態。ここで意識をはっきりさせるのがやっとだったのだろう。笑福は、倒れる妻の横でじっと立っている。熱を測ると7度ちょい。妻は体の節々が痛いと。頭痛も。ベッドに連れて行ってとりあえず寝かせる。妻は「熱中症かもしれない」と言った。前日の猛暑の中の墓参りと海。それが原因か?

一時間たって体が火照ってきたので、測ってみると熱は一気に9度を超えた。やばいと思い、病院を予約。妻の母に電話すると、看護師でもある母は栃木からすぐに駆けつけると。病院に行くと「脱水症状」と診断された。点滴を打ち、一度は元気になったものの……夜遅めに、妻の母が駆けつけ、妻の体を冷やす。とにかく冷やさないといけないと。妻は「寒い寒い」と言う。頭痛、全身の筋肉関節が痛く、まったく動けない。夜中に熱は40度を超えてしまった。妻が40度を超えたのは子宮筋腫の手術をした夜とこの日だけだとか。いろいろ聞くと猛暑の中で妻はあまり水分をとらなかったらしい。それが一番いけないことだと。プラス、クーラーとの寒暖差も原因だと。

熱中症というものを色々調べてみると、まるでインフルエンザ並み、いやそれ以上の苦しさを味わう人も多いらしく、少なくとも三日。長い人だと一か月近くひきずる怖い病気なのだとか。僕も自分が構成している番組で熱中症の怖さとか、取り上げたことあるくせに、心のどこかでは「日射病の強めのやつだろ」くらいにしか思っていなかった。

喉がそんなに渇いてなかったとしても、暑さの中で水分をうまくとっていかないと脱水症状を起こし、人間からかなりの生命力を奪い取る。高齢の方がこれで命をおとすのもよく理解できた。

結局妻は、二日目になっても熱があまり落ちず、頭痛は激しくなった。が、二日目の夜に、妻の母の判断で熱さましで貰っていたロキソニンを頭痛止めとして飲ませると、一時間で大量の汗が出て、翌朝6度台に熱が下がった。そこから一週間かけて、ゆっくりと治っていった。

熱中症で、妻は産後初めてベッドに倒れたが、産後の育児と、仕事を再開してからの日々が確実に体力もメンタルも疲れさせていったのだろう。「ここで一回、休憩しなさい」と神様が言ってくれたのだと前向きに理解しつつ。でも、さすがに40度の熱って焦りますね。

あとで妻に聞いた話ですが、妻がソファーで倒れて動けなくなった時に、息子・笑福は妻の横で立ち上がり、泣くこともなくただじっと見守る。そして時には妻の手をギュッと握ったのだとか。一歳にして母親を守ろうとするその本能。すごいですね。その話を聞き、息子・笑福の頭をなでまくる。「よくぞ、母ちゃんを守ってくれた」と。そんな笑福に、僕が「熱中賞」です。


 
今回の気づき

育児の疲れは自分が思っている以上にたまっている。
妻の妊活休業から出産までの日々を、夫の立場で詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』好評発売中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)も併せてお楽しみください。



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。