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第95回「どれだけ人がいいんだ、川村さん!?」

ブスの瞳に恋してる
 
イラスト/ヤマザキマリ
イラスト/ヤマザキマリ
 
第95回「どれだけ人がいいんだ、川村さん!?」
妻は妊活休業に入り、毎朝僕の朝ご飯を作ってます。そして、体のメンテナンス。そして、すごく有意義に時間を使っています。今までやりたかったけど出来なかったことを沢山してます。実家の両親と旅行に行ったり、学生時代の友達とこれまた旅に行ったり。
 
よくよく考えると、妻は高校卒業してすぐに芸人になっていて、そして22歳で僕と結婚して。普通の女性が20代でやることを全部すっ飛ばしてるんですよね。だから、なんか今、それを取り返してる気もして、見ててほほえましくもあり。
 
友達も増えてるようです。強烈人見知りな妻ですが、周りの人達が手を差し伸べてくれて外に出るようになりまして、その楽しさを感じたりしてます。
 
そんな妻が一番心を許している友達が1人います。女芸人・たんぽぽの川村さんです。『イッテQ!』の壮絶なロケを共にし、最終的には妻が一旦卒業する時に二代目親方を襲名した川村さん。川村さんってテレビのとおりの人で、マジメでズルさもなく、まっすぐな人。
 
芸歴は妻より下だけど、実は同じ年だったりして、そこがまたいいのかもしれない。妻は自分から人を誘うことがあまりないと思うのですが、川村さんは自分から誘います。
 
妊活休業に入る直前、車を購入しました。病院に行ったり、行動範囲が広がるので、車を買ったほうがいいだろうと考えたのです。ですが、15年近くペーパードライバーの妻。ペーパードライバー講習を受けたりしたものの、まだまだ不安。特に高速道路と駐車。
 
ちょっとずつ乗り始めたけど、僕のことはなかなか乗せてくれなかったんです。「危ない」と。もしものことがあったら、と思ったのでしょう。ですが、自ら危険を感じる車に、妻は川村さんを乗せました。川村さんには申し訳ないけど、妻の中では実験台だったのでしょう。夫は乗せられないけど、川村さんなら大丈夫と。川村さん曰く「最初に乗った時は物凄く怖かった」とのこと。
 
が、そんな川村さんの実験台のおかげあって、今では僕も安心して乗れるほどの腕を身につけてくれました。
 
川村さんは人がいいを通り越して、人が良すぎるんです。先日も妻と二人で食事。ちなみにそこは中目黒の和食屋さん。道路に向かったカウンター席で妻が川村さんとおいしそうに和食を食べてるところを僕の友人が見て、メールくれました。「オタクの奥さんが、外の目も気にせず、おにぎりを大きな口を開けてほおばってる姿を見て幸せになれました」と。
 
その食事の帰り、川村さんのかぶっている帽子を見た妻が「川村さん、その帽子いいねー。私のと交換しない?」と言ったのです。川村さんも「いいですよー」と言って交換。家に帰って来た妻の帽子はとてもかわいい。「川村さんと交換したんだ」と凄く嬉しそう。
 
それから数日後、僕がパーソナリティーをしているラジオに川村さんがたんぽぽとして来ました。放送中、川村さんに「実は妻に言いたいけど言えてないこと、ありませんか?」と聞いたら、川村さん、非常に言いにくそうに喋り始めました。

「非常に言いにくいのですが、先日、大島さんとご飯食べに行って、帰りに、大島さんが私の帽子を見て、気にいって、交換しようと言って交換したのですが、実は、あの帽子……。買ったばかりの帽子なんです」
 
妻の帽子は買って何年もした帽子。川村さんの帽子は買ったばかりの新品。野球界でいえば、いきのいい新人と年季の入ったおじさん選手。トレード成立しませんよ。妻のやった行為はジャイアンです。完全にジャイアン行為。だけど、その二日後に、また妻は川村さんと食事に行ってました。
 
なんかね、妊活休業に入ってから妻の性格も前とちょっと変わってきたというか。丸くなったというか。ガリガリしてる部分が取れたというか。なんか、芸人として生きてる時って常にガリガリなガリガリ君だったんだけど、妻を丸くしてくれているみなさんに本当感謝です。
 
ちなみにですが、妊活休業に入った初日からウォーキングをすると宣言した妻。翌朝7時に起きて、川村さんの家に寄って川村さんを起こしてあげると約束したらしい。が、朝、9時になってもベッドで寝ている妻。そこに川村さんからメール。そのメールには書かれていた。「大島さん、道に迷われていますか?」。どれだけ人がいいんだ。川村さん。
 
あれから二か月経ちますが、まだウォーキングに出かけたことはない。
 
そういうところは変わってないんだよな……。


今回の格言

30過ぎてその性格をちょっと変えてくれる友人に会えることは素晴らしいことだ。
ペーパードライバーの車に同乗してくれたり、買ったばかりの帽子を気軽に交換してくれたり……なんていい人なんだ川村さん。ウォーキングもぜひご一緒に! こんな「いい友達との出会い」は単行本『ブスの瞳に恋してる』シリーズ(1~4)にも!



鈴木おさむ
放送作家。妻・大島美幸(森三中)の妊活休業から出産までを、詳細につづった単行本『妊活ダイアリー From ブス恋』が大人気。育休ならぬ、「父勉」(父になる勉強)中。既刊『ブスの瞳に恋してる』シリーズ1~4。