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物と記憶 クロワッサン 編集部こぼれ話 No.1018

From Editors 編集部こぼれ話

物と記憶

今号では物づくりの町を訪ねて、新潟県は燕市に行ってまいりました。写真のスプーンは何を食べる用か、わかりますよね?
自分が育った町は関東の田舎町で、近所にイチゴ畑がありました。あれは、うららかな陽射しの土曜午後。農家のおじちゃんは気前がよく、下校途中の子どもたちをつかまえて「好きなだけ摘んできな」と声をかけてくれた。ポケットに、鞄に、もうできるだけ。家に帰ったら、黄色い通学帽の裏地が真っ赤になっていて仰天したものです。
燕市にあるイチゴスプーンの製造元の〈ラッキーウッド 小林工業〉によると、このつぶつぶの配列が肝であるそう。「よく見ると並びが放物線を描いているでしょう。縦、横、整然よりも、このほうがつぶしやすいんです」(小林社長)。同社は、なんとこのイチゴスプーンを初めて考案した会社でもあるそう(特集記事も併せて読んでみてください)。
近ごろはあまり見かけなくなったイチゴスプーンですが、今年は久しぶりに取り入れてみるのはどうでしょう。自分などは、このつぶつぶの銀の面を見るだけで、それで押さえつけられつぶされていく、硬くて柔らかいあの独特の感触がよみがえってきます。最後に使ったのはもうずいぶん昔のことなのに、手が覚えています。
 
(編集kh)


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このスプーンとくれば、白砂糖、コンデンスミルクがセット。
 
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