マガジンワールド

旅とうつわと食器棚。 クロワッサン 編集部こぼれ話 No.1032

From Editors 編集部こぼれ話

旅とうつわと食器棚。

旅先でわたしの心を鷲づかみするもの。ベスト3が、布、かご、うつわです。特にうつわは、「好きなタイプ」がちらりとでも眼の端に映ったら、とうてい買わずには帰れません。自宅に売るほどあるというのに「こういうのは持ってない」と自分に言い訳をして、買う。同行する友人などには「いやいや、持ってるよね?」と半笑いでいさめられることもしばしば。しかし、今回「うつわ」特集を担当し、ご登場いただいた方たちの多くが「ご同輩」であることがわかり、ちょっとホッとしています。
旅先で出合い、毎日飽きもせず使い倒しているうつわがあります。それらを手にすると、購入した時の光景や旅の様子まで思い出すから不思議です。石垣島で手に入れたやちむんは、島の食堂で出されたお取り皿がやたらに気に入って、店主にどこで買えるのか聞いて求めたもの。あの時食べた蛍光色の刺身はなんだったんだろうとか、たいして飲めもしない泡盛をあおって泡吹きそうになったんだったとか、思い出もぐるぐる蘇ります。ソウルに友人を訪ねて行った時に買ったお皿は、1枚1枚絵柄が異なるので、店員さんに無理を言って全部並べてもらい選びました。自分のセレクトが、かなり「乙女寄り」だと自覚した買い物でした。夏の仙台では、新幹線の発車時刻ぎりぎりまでうつわ選びに没頭し、牛タン弁当を買い損ねるという大失態もありました。
そうやって我が家の小さな食器棚が、少しずつ気に入ったうつわと愉快な思い出で埋まっていくのはしあわせな気分です。最上段の棚には、20数年前はじめてのひとり暮らしで買った『F.O.B COOP』のグラスやカフェオレボウルも鎮座しています。これもまた自分の出発点を見るようで悪くない。きっとここに、これから先、母から受け継ぐものも加わっていくのでしょう。そう思うと、なかなかに愛おしさの増す食器棚なのでした。
今回の特集では、うつわ好き、それもとびきり素敵なうつわをお持ちの5人の女性の食器棚も取材しています。五人五様の物語と美しいうつわの数々、ぜひ本誌でお楽しみください。
 
(編集T)
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乳白色で軽くなめらか。まさに乙女のような可憐な手触り。『チョン・ソヨンの食器匠』で購入。
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牛タン弁当と引き換えに『仙台光原社』で手に入れたうつわ。作家名を失念したのが悔やまれます。


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