マガジンワールド


FOOD NEWS vol.107 平野紗季子のMY STANDARD GOURMET 『BISTRO GLOUTON(ビストロ グルトン)』のカニクリームコロッケ

FOOD NEWS
  • RESTAURANT _ 犬養裕美子
  • GIFT _ 真野知子
  • SWEETS _ chico
  • NEW STANDARD _ 平野紗季子
vol.107
平野紗季子のMY STANDARD GOURMET
『BISTRO GLOUTON(ビストロ グルトン)』のカニクリームコロッケ
カニクリームコロッケ¥800 常識を覆す味。クリームの中にカニの繊維がちらほらと混入した旧来の心温まる味わいをぶっちぎる、蟹キングの誕生。
カニクリームコロッケ¥800 常識を覆す味。クリームの中にカニの繊維がちらほらと混入した旧来の心温まる味わいをぶっちぎる、蟹キングの誕生。
 

『ビストロ グルトン』の黄金の俵を噛み締めた瞬間「今まで食べてきたのはカニクリームコロッケではなくクリームカニコロッケだったのか……」と膝から崩れ落ちそうになった。軽やかな衣の内部にはズワイ蟹の身がぎっしりと詰まり、それを渡り蟹のビスク沼(ウスターソースじゃない!)にどっぷりつけていただけば、底なしにこみあげる旨味が見事に歴史を塗り替えていく。それほどの衝撃を食らわせておきながら、シェフの小更耕司さんは飄々と言いのける。「別に特別なことをしているわけじゃないですよ。しいていうなら…手を抜くという発想がないんです。どうせやるならとことんやる。いいところを使うし、まがい物は出せない。そういう考え方が料理人生の中で染み付いているんです」。小更シェフは『ビストロ グルトン』を開店するまで、名だたるグランメゾンで腕を磨いてきた。彼のお皿には“本物でもてなすこと”への料理人の矜持が満ちている。でもだからといって肩肘張った空気は微塵もない。あくまで店には町の洋食屋さんのような空気が流れていて、とても心地いい。「高級路線ではなく、結局おいしいものをシンプルに出せる店を作りたかったんです」。自分に厳しく、お客さんにはとことん甘い。この店がこれから5年10年この町で愛されていくのが目に見えるようだった。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
 
BISTRO GLOUTONBISTRO GLOUTON
東京都世田谷区池尻2-33-7 ☎03・3410・5517 18:00~24:00(23:00LO) 日曜、第3月曜休 ビストロメニューからハンバーグまで、メニュー数は常時50種以上。アラカルトで好きなように組み合わせられる。


写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子