マガジンワールド

FOOD NEWS vol.47 平野紗季子のMY STANDARD GOURMET 『ボブ東京』の鶏の手こねつくね定食

FOOD NEWS
  • RESTAURANT _ 犬養裕美子
  • GIFT _ 真野知子
  • SWEETS _ chico
  • NEW STANDARD _ 平野紗季子
vol.47
平野紗季子のMY STANDARD GOURMET
『ボブ東京』の鶏の手こねつくね定食
鶏の手こねつくね定食¥1,200(写真はネギ塩ダレ。ほかに醤油ダレも) 「お酒飲んでる若い子もいれば、子連れの家族やおじいちゃんもいる。そうやってたくさんの人を幸せにできるのが嬉しい」と由季さん。
鶏の手こねつくね定食¥1,200(写真はネギ塩ダレ。ほかに醤油ダレも) 「お酒飲んでる若い子もいれば、子連れの家族やおじいちゃんもいる。そうやってたくさんの人を幸せにできるのが嬉しい」と由季さん。
 

『ボブ東京』はボブさん(日本人)と奥さまの由季さんが夫婦で営む食堂である。もともと祐天寺で店を始めたのが9年前。それが去年5月の立退きに伴い惜しまれながら閉店。それから半年後の11月に、新生『ボブ東京』が学芸大学に誕生し常連さんたちは歓喜した。小鉢の揃った正しい定食×民生食堂的メラミンテーブル×天井をぶち抜いた開放感×ハワイのラジオがBGMという、ストリートと昭和クラシックの絶妙なハイブリッドがまさに東京の食堂の現在を体現しているようであり、その実「ハワイのジャパニーズレストランをイメージ」という魅惑の謎設定が最高だ。

ふわっふわの鶏つくねや唐揚げの人気メニューは勿論、定食のお魚は築地で仕入れた新鮮なものばかり。更にメニューに目を凝らせば、めかぶの素揚げにボブ汁(岩海苔のお吸い物)…と磯の香り溢れる料理が見え隠れ。「うちの母が福井の海女で。昔は海辺で民宿もやってて、母がとったウニやアワビを食べて育ちました。今も食材を福井から送ってくれるんです」ってなんて羨ましい出自! どうりで岩海苔の食感も香りもこんなに生き生きと海の味がしたのかー……おそるべき潮騒一家のDNA。店の外のソフトクリームライトは、まるで街の灯台のように輝いてみえるのだった。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。食ブロガー。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
 
ボブ東京ボブ東京

東京都目黒区五本木2-54-15 
☎03・3712・0405 
11:30~14:30(14:00LO)、18:00~24:00(23:00LO) 日・祝日休
http://www.bob-tokyo.com/

写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子