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FOOD NEWS vol.131 平野紗季子のMY STANDARD GOURMET 『CROSSROAD BAKERY(クロスロード ベーカリー)』のニューイングランドクラムチャウダーのブレッドボウル

FOOD NEWS
  • RESTAURANT _ 犬養裕美子
  • GIFT _ 真野知子
  • SWEETS _ chico
  • NEW STANDARD _ 平野紗季子
vol.131
平野紗季子のMY STANDARD GOURMET
『CROSSROAD BAKERY(クロスロード ベーカリー)』のニューイングランドクラムチャウダーのブレッドボウル
ニューイングランドクラムチャウダーのブレッドボウル(¥900)。パンの仕込みは前日からスタートし、長時間低温発酵させたうえで高温で焼き上げる。そのこだわりが、外側ぱりっと中もっちりな理想のブレッドボウルを生み出している。
ニューイングランドクラムチャウダーのブレッドボウル(¥900)。パンの仕込みは前日からスタートし、長時間低温発酵させたうえで高温で焼き上げる。そのこだわりが、外側ぱりっと中もっちりな理想のブレッドボウルを生み出している。
 

冬の寒い日にあたたかなスープを飲むのはそれだけで幸福だけど、それがブレッドボウルになみなみと注がれて現れたら、どんなご馳走も敵わない。

恵比寿に今年の10月にオープンした『CROSSROAD BAKERY』では、まさに絵に描いたようなブレッドボウル入りのスープがいただける。ずんぐりと焼かれた大きなパンに、あさりがたっぷり入った濃厚なニューイングランドクラムチャウダー。ふわふわと湯気を漂わせるその姿は、眺めるだけで暖がとれそう。スプーンで頬張る具沢山の食べ応えも嬉しいけれど、クライマックスはじんわりチャウダーが染みたパンをちぎって食べる瞬間。ひたひたしっとり食感と、それでもパリッと香ばしい外皮のバランスが最高潮の美味しさを運んでくれる。正直言えばパンとスープを別で出しても味の構成自体は変わらない。だけど彼らがブレッドボウルにこだわったのは、そこに宿る幸福感。パンのクオリティにはもちろん本気、だけどチャーミングさも忘れない。そんな楽しい仕掛けがあるからこそ、人は笑顔になるし、店は明るくなる。

店内にはカフェスペースが併設され、さっとパンを買いたい時も、のんびり食事を楽しみたい時も大歓迎で寄り添ってくれる。交差点を行き交う人たちのありとあらゆる空腹を満たすパン屋さんは、この街に新たな幸せの風景を増やしている。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
 
CROSSROAD BAKERYCROSSROAD BAKERY
東京都渋谷区恵比寿西 1-16-15-1F ☎03・6277・5010 8:00~23:00(22:00LO) 無休(年末年始は除く) http://crossroadbakery.com/


写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子