性愛というフィルター越しに、“才能”がほとばしる。 From Editors No.2257
From Editors
編集部リレー日誌
性愛というフィルター越しに、“才能”がほとばしる。
昨今の文学界は新人の方から大御所の先生まで挑戦心を持った新たな試みや、考えもしなかった視点を持った作品が次々に生まれ“アツい”と感じています。なかでも大注目のお三方が今回「官能小説」を書き下ろしてくださいました。
まずは、現在直木賞にノミネートされている一穂ミチさん。最新刊『スモールワールズ』は、味わいの異なる短編がぎゅっとつまり、どの作品も独特の世界を繰り広げる名作です。BLを長く書かれている一穂さんがどんな性愛を描いてくださるのか…。いやがうえにも期待で胸が高鳴ります。
そして、『元彼の遺言状』で、このミステリーがすごい! 大賞を受賞された新川帆立さん。新川さんから官能小説を想起する方は滅多にいないのでは!? と作品をいただくのが楽しみで仕方ありませんでした。
蝉谷めぐ実さんは、本を開いたとたんに江戸に連れていかれる『化け者心中』でめまいがするほどの色っぽさを感じていたので、「江戸が舞台でよいでしょうか」とのお問い合わせに前のめりに「ぜひ!」とお願いいたしました。
書きあがった作品は、どれもこれもすばらしく、都会の静けさを感じる一穂さんの「ツーバイツー」、太陽にじりじりと焼かれる路地が目に浮かぶ新川さんの「ラスト・セックス」、薄暗い江戸の家屋に香の香りが立ち上るような蝉谷さんの「からだの音」。どれも全く味わいが違う濃密な性愛小説となりました。
さらに、皆さまのお人柄がうかがえる、性愛小説を書くことと読むことについての鼎談とお薦め本まで充実の「性愛文学」ページができあがりました。蒸し暑く眠れぬ夜や、現実から離れたいとき、文学の扉を開いてみてください。そこには、想像を超えた世界が広がっているはずです。(SN)