“パティスリー界のピカソ”、ピエール・エルメ氏だってモンブランには目がない。彼にとってモンブランは幼い頃から、家族で過ごす日曜に欠かせなかった、懐かしい存在なのだそう（故郷のアルザスではモンブランではなく「トルシュ オ マロン」＝栗の松明と呼ぶのだけれど）。
　
この秋は特別。定番の（とはいえ野バラ香るエルメ流）モンブランに加えて、4つも新作が出るのだから！　メレンゲ、クレームシャンティ、マロン。昔ながらのモンブランの基本コードを守りつつ、エルメはそれを新たに読み解いて、知られざるおいしさを生み出していく。ひときわ目立つのが「モンブラン イスパハン」。ローズ、フランボワーズ、ライチが鮮やかに調和する名作、「イスパハン」とモンブランの融合。こんなに美しいモンブラン、見たことない！　いただいてまた驚いた。ローズ風味のマスカルポーネクリーム、フランボワーズとライチのコンポート、サクサクのメレンゲを、ローズ香るマロンピューレがまったりと包みこんでとろけていく。口あたりも香りも、なんてロマンティックなんだろう。色っぽい香りをふりまくかと思えばキュンと甘酸っぱい。可憐でいて妖艶、そのうえエレガント……姿だけでなく味わいまで、どこか美女みたいだ。