わずか4ｇ。いつもの半分ほどのボンボン・ドゥ・ショコラをかじると、野菜の活気とショコラがまさかの調和。チョコレートにこんな楽しみがあったのか！
「お酒にもあう、トレトゥール（お惣菜）みたいなショコラにしたくて」と、Ｍ.Ｏ.Ｆ（フランス国家最優秀職人章）ショコラティエ、ニコラ・クロワゾーさん。大胆に、そして驚くほど緻密なバランスで野菜をショコラに仕上げてみせた。まず、パプリカのまろやかさや玉ねぎの甘みを独自の方法で引き出すと、自在にアクセントをつけて彩っていく。たとえば香り高いセップ茸にはヘーゼルナッツのノートを重ねた。食べてみるとキノコの香りがふわりと訪れ、香ばしいナッツのプラリネがフレッシュバターみたいにとろんと濃密なテクスチャー。キノコとナッツが織りなす、ちょっと色っぽい香りの余韻があとをひく。玉ねぎを使ったひと粒もまたドラマティック。ミルクチョコレートのまろみの中に、玉ねぎの甘い香りがやってきたかと思えば、バルサミコ酢に漬けたイチジクが芳醇な風味を添えていく。複雑に折り重なる味わいには余計なものが何一つなく、野菜がショコラをこんなにも豊かにしてくれる。ニコラさんの菜園ショコラは、とびきり上質な野菜料理みたいだ。