マガジンワールド

FOOD NEWS vol.119 平野紗季子のMY STANDARD GOURMET 『彩薫舎(さいくんしゃ)』の燻製サンドイッチ

FOOD NEWS
  • RESTAURANT _ 犬養裕美子
  • GIFT _ 真野知子
  • SWEETS _ chico
  • NEW STANDARD _ 平野紗季子
vol.119
平野紗季子のMY STANDARD GOURMET
『彩薫舎(さいくんしゃ)』の燻製サンドイッチ
「燻製サバとポテトサラダのサンドイッチ」(¥620)、「手作り燻製ベーコンのBLTCサンドイッチ」(¥600)、「スモークチキンとキャロットラペのサンドイッチ」(¥600)。店内の雰囲気はさながら燻製ファクトリー。
「燻製サバとポテトサラダのサンドイッチ」(¥620)、「手作り燻製ベーコンのBLTCサンドイッチ」(¥600)、「スモークチキンとキャロットラペのサンドイッチ」(¥600)。店内の雰囲気はさながら燻製ファクトリー。
 

淡路町の路地裏に現れる「燻」と書かれた赤看板。その魅惑的な一文字に惹きつけられて『彩薫舎』の扉を開けると、ふわーんとスモーキーな香りに包まれる。こりゃどうしたって胃袋がはしゃいじゃう匂いだなあ。と深呼吸しながらショーケースに目をやれば「燻製サバとポテトサラダのサンドイッチ」や「燻製ベーコンのBLTC」などなど、すべての商品に燻製の名が冠された色気たっぷりのサンドイッチが並んでいる。つまりこの店、燻製専門店。奥には堂々と燻製機が鎮座し、店主の千葉幸広さんが日々燻製づくりに勤しんでいるのだ。燻製といえばお酒にアテる夜のおつまみのイメージが強いけれど、千葉さんが作るのはランチでも食べたい昼の燻製料理。燻製香が尖りすぎず弱すぎず、料理として調和の取れた味わいを目指している。例えば燻製サバサンドの場合は、燻製サバの存在感をたしかに感じさせつつ、パサパサとした食感が浮かないようクリーム状のポテトサラダを添えることで完璧なバランスに。これがもう食欲の一歩先を行く風味の豊かさで、追いかけるように完食してしまう。そもそも燻製はスモークにかける時間やチップの種類など、あらゆる条件の塩梅で出来上がりに大きな変化の出る技法。職人気質な千葉さんが追求する燻製道が、私たちの燻製観をぐーんと広げてくれる。

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードライター。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)。
 
彩薫舎彩薫舎
東京都千代田区神田須田町1-2-3 山勝ビル1F ☎03・5207・2740 11:30~(売り切れ次第終了予定) 土・日・祝日休 http://saikunsya.tumblr.com/


写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子