マガジンワールド

365日と、365本。 From Editors 2 No. 884

From Editors 2

365日と、365本。

どんな映画も、当然「ある1日」が描かれている。そんなわけで、毎日「ある1日」が出てくる映画が紹介されたカレンダーがあったら楽しいんじゃないか? そう思って作ったのが、「今日も明日も映画の日」という、1日1作品ずつその日を舞台にした、あるいは紐づいた映画を紹介する企画。実際の事件や実在の人物を描く史劇なら、史実を辿ることで作品に行き着くことができるし、クリスマスやハロウィンなどが舞台になった映画も多い。当初は、365本なんてすぐ埋まるだろうと、知識を総動員しつつ、365日分、その日が何の日かを捜す→それを描いた映画は何か、という流れで調べを進めていきました。
が、事件はあっても映画がないということはザラで、どうにも埋まらない日付が積み上がってくる。となれば、今度は映画の中から探す方法へ。「この名作には日付が出てくるのでは?」と思う作品を観ては、日付が表示されたシーンで一時停止の繰り返し。時には、列車のチケットや絵葉書の消印、劇中のテレビ画面などに出てくることも。些細なヒントも見逃すまいと、いつもとは違う神経を研ぎ澄ませて映画を観まくる日々。悩ましかったのは、いい作品が同じ日に集まるという事態でした。苦労して見つけてきても、そこには既にいい作品が鎮座していることも多々で、ガッカリ……なんてことは何度も。でも埋まらない日はいっこうに埋まらず……。そうやって、『TENET テネット』ように“順行”と“逆行”で挟み撃ちにする調査を重ねながら、すこしずつ365日が埋まっていきました。
一筋縄にはいかない調査の中で感じたのは、世の中には、こんなにもいろんな映画があるのか! ってこと。正直、タイトルすら聞いたことのない作品もあったけれど、日付がきっかけで、まだ観ぬ作品に出合えるってのもまた一興。全部観るには、途方もない時間がかかりますが、することがない日の暇つぶしにはもってこいかと。でも、そうやってもし、自分のオールタイムベストが見つかったら、それはそれで忘れられない思い出になるのではないか。そんなきっかけのひとつになってくれたら、そんなに嬉しいことはありません。
映画は好きだけれど、実際そんなにたくさんは観てきていないし、語るだけの知識も自信もない。そんな人でも、このページを見て、誕生日や記念日が舞台となった映画について、家族や友達との映画トークを楽しんでもらえたら、苦労の日々が報われる気がします。もちろん、ちゃんと発売月の11月から来年10月までのカレンダーにもなっているので、そういった使い方でもぜひ。ちなみに、僕のバースデー映画は『ジャンヌ・ダルク』でした。

角田貴宏(本誌担当編集)
 
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「今日も明日も映画の日」の他に僕が担当したのは、映画『はちどり』で長編デビューしたキム・ボラ監督のインタビュー。本作は、監督の優しい眼差しが随所に感じられる作品でしたが、実際話を聞いてみた彼女も、素敵で優しい方でした。
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他にもPOPEYE創刊の1976年にどんなベストテンがあったかをまとめた企画も。淀川長治さん、双葉十三郎さん、蓮實重彦さんのレジェンド批評家の、チョイスはどれも個性的で、1976年がどんな時代だったのかを知るにはもってこい。



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誰かと話したくなる映画。

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