非・桃太郎飴的シティ。 From Editors 2 No. 877
From Editors 2
非・桃太郎飴的シティ。
受け手によって違う解釈を生む名作映画のように、この街は人によって、年齢によって、そのときの気分によって、まったく違うものになります。休日と平日、初めての渋谷と10年目の渋谷、上司と乗る山手線と恋人と乗る山手線など、同じ場所でも景色が違って見えること、ありませんか? そのうえ、新しい店がどんどんできて、いつの間にか駅まで増えたりする。東京に飽きることは永遠にないんじゃないかと思います。さらに、自分の気分や視点をちょっと変えてみると、またまた別の”東京”が現れます。
試しに、今回は、開高健が1960年代の東京についてルポした『ずばり東京』という本を片手に、開高さんになりきって街を闊歩したり、江戸っ子気分で東京の食を食べ歩いてみたり、はたまた、一人で深夜番組をつくるつもりで「4月に春キャベツを食べるならどこだ!」なんて妄想しながら、おいしい春キャベツを出す店BEST3を勝手に探してみたりしました。そうやって気分を変えるだけで、馴染みの店の隠れた歴史を知ることや、隣町の変な店を見つけることができます。
どこをどう切り取っても違う味になっているし、その味も季節や一緒にいる人や自分の年齢によっても変わる。桃太郎飴とはまったく逆の存在なんだと改めて思いました。
なかなか出歩けないかもしれないけれど、「自分ならこの街をどう切り取るか」と考えながらゆっくり読んでもらえたら嬉しいです!
宮本賢(本誌担当編集)