From Editors 2 No. 812 山だけじゃない、遊歩大全。
From Editors 2
山だけじゃない、遊歩大全。
mont-bellの60Lを背負って、海外を歩いた20代前半の頃。2000年代はじめのことで、あの旅はボクにとって1つのバックボーンになっています。バックパッカー、という言葉への憧れもありました。1つの荷物だけが頼りの、極貧・一人旅。バックパッキングに抱いていたワクワクを、今でもリアルに思い出します。大切な体験です。
ですが、今回の「遊歩大全」号の取材を通して、バックパッカーだった自分がちょっと恥ずかしくなりました。
『バックパッキング入門』のイラストレーター・小林泰彦さん、『バックパッキング教書』の著者・田渕義雄さん、『ウルトラライトハイキング』の著者・土屋智哉さん。日本のバックパッキング史を語るのに重要な3冊の制作者にインタビューをしたのですが、お三方いわく、「バックパッキングという言葉の意味が、今ではすり替わってしまっている」。
詳しくは本誌の「読んでおきたいバックパッキングの本」をご覧下さい。言われてみれば、という些細な気づきなのかもしれませんが、元々バックパッキングというのは60年代からアメリカでおこり始めたヒッピー文化が原点。家出、ですね。そして『遊歩大全』の原型である『THE COMPLETE WALKER』の登場により、自然の中を歩く・自然の中で過ごすという意味になっていきます。これが本来の意味なんだとか。
90年代以降から今に続く、「1人で海外を貧乏旅行すること」というのは、海外旅行の大衆化・格安プランの連発が生んだ曲解だと。
ボクはそんな原点も知らずに、「いえーい、バックパッカーだぜ!」なんて気分に浸って何カ国も回っていたわけです。なんだかチョット恥ずかしい……。もちろん否定的にはなっていません。ただ、バックパッキングとは何かをちゃんと知っていたら、あの頃にもっと違う形の旅を考えられたのかもしれません。もっと面白い経験ができたのかも、なんて。
この「遊歩大全」号は、アウトドアの特集に見えるかもしれません。でもボクが『遊歩大全』と今回の編集・制作から学んだことは、旅についての考え方・アイデアでした。
山とか別に好きじゃないしー、という人も、旅が好きならご一読を。1000ページ近い『遊歩大全』を3ページにまとめたダイジェストもありますから(けっこう大変だった……)、気軽にぜひ。