From Editors 1 No. 815 京都のシティボーイの部屋は、まるで“昭和銭湯博物館”!
From Editors 1
京都のシティボーイの部屋は、
まるで“昭和銭湯博物館”!
年末年始、たくさんの部屋(家)にお邪魔した。どの部屋にも語りたい“ストーリー”があるけれど、ここは一部屋に絞り、京都のシティボーイの部屋について書きたいと思う。彼の名は、湊三次郎くん。“銭湯活動家”の肩書きで、京都を中心に各地の銭湯保存活動に励んでいる。山本康一郎さんのコラム連載「おとなのせなか」で東京の銭湯を取りあげた際、編集部宛に手紙を送ってきてくれたこともあった。文面には銭湯愛が溢れていた。
湊さんが住むのは古い町家の一角。もともとは小料理屋さんだった名残で、1階には大きな木のカウンターがある。取材当日、「部屋と料理」という特集テーマに合わせて、鍋を作ってもらうことになっていた。「準備をしますね」と湊くん。具材を切ると、鍋を抱えて2階へ。一緒に上がると、そこはもう“昭和銭湯博物館”のよう! ちゃぶ台のある畳の間には、銭湯絵師・丸山清人さんが描いた富士山の絵、ケロリンの風呂桶、“入浴の御注意”が書かれた琺瑯の看板などなどが飾られ、クレイジーケンバンドの歌詞ではないが、一気に“昭和にワープ”してしまった(ちなみに曲名は「かっこいいブーガルー」)。この部屋にあるストーブの上に鍋を置き、具材を入れて煮立つのを待つ。本日の鍋は、鶏の水炊き。具材は鶏肉、野菜、厚揚げ、豆腐。とことんシンプルだけど、これがべらぼうにウマかった。素材の良さはもちろん、この銭湯愛に満ち満ちた部屋で、「大学のゼミ論は『静岡の銭湯』だったんです。ブラジル文化を専攻していたけど、先生が『湊くんは好きなことを突き詰めたほうがいい』と言ってくれて」と“いい話”を聞きながら食べたから、美味しさは倍の倍ぐらいになったような気がする。
部屋には“人柄”が出る。つまりは、住む人と部屋は似ている。今号の特集を終えて思ったのは、“人柄のいい部屋”というものが確実にあって、そういう部屋はとても居心地がいいということ。自分の部屋にはどんな人柄が出ているか。『ポパイ』を見つつ、そんなことを考えるのも楽しいと思います!
山口 淳(本誌担当編集)