出会えなかった、“暑がりな犬”のはなし。 From Editors 2 No. 842
From Editors 2
出会えなかった、“暑がりな犬”のはなし。
まずはじめに断っておくと、東京はホットドッグ天国である。あっちにも、こっちにも、ホットドッグがある。必ずしも主役ではないが、ひっそりと店のメニューの端っこで、頼まれるその日を待っている、時にはそんなやつもある。うまい。毎日、毎日食べると、だんだん語りたくなってくる。
一方で、本誌では紹介できなかった、惜しまれつつ消えていったドッグの話をここではしたい。
ホット=熱い、ドッグ=犬。そんな解釈のもとに作られたというホットドッグがあると聞いた。
福岡県は久留米「キムラヤ」のそれである。“犬は熱いと舌を出す”という連想で、ソーセージではなく、パンにはハムが挟まり、犬の舌のようにのぞいている。赤と緑の紙に包まれた、かわいいやつだ。
少し前にニュースになったので、きっとご存知の方もいるかもしれない。そしてそのニュースというのが、「キムラヤ」が今年の1月に、91年の歴史に幕を下ろしたというものである。
調べてみると、工場自体は福岡・神宮町の「フランソア」という会社に譲渡されたというが、ホットドッグを作るかはまだ未定、とか。
僕は最終的にその、“舌を出した暑がりな犬”には会えなかった。だが消えゆくドッグがある中で、冒頭で述べたように東京には、そして日本には、ホットドッグがたくさんあり、そこに熱い思いをかける人がいる。とにかく今食べてほしい、そして明日誰かに話してほしいホットドッグを23ページに詰め込んだ、第二特集「ホットドッグが食べたい!」、ご期待ください。
岩渕大介(本誌担当編集)