目的のないときこそ本屋へ! きっと“声”が聞こえるはずだから。 From Editors 1 No. 845
From Editors 1
目的のないときこそ本屋へ!
きっと“声”が聞こえるはずだから。
今回、新刊本屋に古本屋、個人書店に大型書店、そして総合書店からマニアック本屋まで、実に様々な本屋に行きました。ほぼすべての店で抱いのが「本に呼ばれてる!」という感覚。夏のオカルト話ではなく、本の“声”が聞こえてくるのです。その“声”ですが、前から興味があった、読みたかった本よりも、まったくノーマークだった本から聞こえ、ぐいっと引き寄せられてしまうことのほうが断然多い。“声”となったのは、タイトルそのものだったり、タイトル文字のフォントだったり、表紙のデザインだったり、手に持ったときの本の質感だったり。まあ、言葉にできない“何か”ということもある。いずれにしても、この本屋に、このタイミングで行かなければ、おそらく聞こえなかった“声”だと思うのです。まさに、一期一会。

つくば市の『PEOPLE BOOKSTORE』にて“声”が聞こえ、思わず購入した本。吉田拓郎の本は若干退色した表紙の色合い、タイトルと著者名とその間の「○」のバランスがいい。イッセー尾形の本は、シティボーイとは切り離せない「都市生活」という言葉に惹かれて。
目的の本があるときはもちろんだけど、それがないときこそ、本屋に足を運ぶといい。本と共鳴して、秘めたる“興味”に気付くことがきっとある。京都の『ホホホ座』店主の山下賢二さんが「本屋は公園だと思う」と言っていたけど、きっとそうなのだ! 肩の力を抜いて、のんびり過ごすために訪れたっていい。たまには(失礼!)、公園の管理費として本を買うことは必要。愛する本屋を微力ながら買い支えることも、僕らの役割なのだから。今回の特集が、本屋の楽しさにあらためて気付くきっかけになれば幸いです。
山口 淳(本誌担当編集)
