マガジンワールド

自販機バーガーの空き箱に故郷を思う。 From Editors 2 No. 857

From Editors 2

自販機バーガーの空き箱に故郷を思う。
日帰りで仙台にある日本最古のハンバーガー屋に行ったり、丸一日かけて「ハンバーグ師匠」ことスピードワゴンの井戸田潤さんと都内の個性的なバーガー巡りをしたり、レイザーラモンRGさんにハンバーガーあるあるをやってもらったり。それこそバーガー漬けの日々を送ってきました。なかでも忘れられないのが、自販機バーガーを求めて群馬県をロードトリップした取材。自分の生まれ故郷である群馬を、まさか取材で回るなど想像もしていなかったので。

カメラマン深水敬介さんのスバル(これも群馬といえば!)に乗って巡ること4軒。車窓からの田舎景色は退屈そのものでしたが、それを吹き飛ばしたのが「ドライブイン七輿」という古びた店。こんなとこあったんだ! 見慣れたはずのこの地に新鮮さを覚えたのは、初めての経験。看板の文字は風雨に晒されて掠れ、さながら現代アートのよう。時の流れが生んだ造形美でした。店主の老夫婦も魅力たっぷりで、素朴さを絵に描いたようなお二人を見ていると、子供の頃こんなおじいちゃんおばあちゃんいたなって。「苦労も多かったけど、いろいろ頑張って楽しかったよね」と言い合う二人は輝いていました。そこで食べた自販機バーガーも、年輪のように刻み込まれた二人の皺をそのまま移したかのようなシワシワバーガー。不恰好だけど素朴で暖かい、そんな田舎の良さをそのまま閉じ込めたような店でした。なんだ、群馬にもいいとこあるじゃないか。郷土愛が最高潮の取材後に編集部のある東銀座に戻ると、最近まであったはずの群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」は、なくなっていました。やはり故郷は近いようで遠い。この夏は素直に実家帰ろうかな。

角田貴宏(本誌担当編集)
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「ドライブイン七輿」で買った自販機バーガーの空き箱は、レトロな見た目がたまらず、とっておいたささやかな取材の戦利品。


ポパイ No. 857

ハンバーガーと一緒に……。

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