マガジンワールド

高知でコーチジャケットを買いました。 From Editors 2 No. 866

From Editors 2

高知でコーチジャケットを買いました。

僕が主に担当したのは「ちょっとハイキングしに、ニュージーランドへ」や「高知にいい外岩があると聞いて」などの、外に出るには一番気持ちいい5月にやりたい、アウトドアの内容でした。残念ながらニュージーランドには行けなかったのですが、高知県には取材に行くことができました。大山岬という、太平洋沿岸の“黒潮ボルダー”として知られる岩場はとても気持ちよく、クライマーの中嶋徹さんとロッククライミングの撮影をしていくなかで、仕事であることを忘れるような、楽しい気分になりました。僕も簡単そうな岩を少し登ってみたのですが、普段使わない筋肉が張り詰める感覚はなかなか心地良く、登りきった小高い岩から眺める海はキラキラと輝いていて本当に美しかった。いきなり外岩というのも難しいかもしれないけれど、とりあえず近所のボルダリングジムに通うことから始めてみようかな? と思った次第。

ことほどさように、「あなたが今欲しいもの、したいことは何ですか?」と突然聞かれても明確な答えを出せる人はそう多くはないでしょう。しかし、誰かと話すうち、実際何かをしてみるうちに、「そうそう、僕はこういうことがやりたかったのだ」と気づかされることってままあると思うんです。今回の特集は、読者の皆さんに、そんな気づきをたくさん得てもらえたら嬉しい。僕が高知の取材を通して、それまで1ミリたりとも思っていなかった、外岩に登ってみたいという願望を抱いたように。それはガーナの映画ポスターでも、田我流さんが気になっているオーディオでも、ピエール・ジャンヌレの椅子でも、何でもいいかもしれません。そもそも、雑誌の役割ってそういうもの。パラパラめくっていくうちに、そういえばこういうもの欲しかったな、こういうことがしたかったなと、自分でも意識していない潜在的な「したい」に気づくための、スイッチみたいなものだと思うのです。片手で何でも調べられる時代ですが、そのとっかかりとなるキーワードが頭になければ検索すらできませんからね。ちなみに写真は、高知市内にあるアメカジショップ『ミルズ』で見つけた、2000年代初頭の日本製の〈ザ・ノース・フェイス〉のコーチジャケット。ここには在庫から自然発生した、“天然もののデッドストック”が数多く眠っていました。今どきオンラインストアもやらない、高知の隠れた名店。いつか改めて黒潮ボルダーに挑戦する時がきたら、この「高知ジャケット」を羽織って。そして登った後に、再びこの店に立ち寄りたいなと。

角田貴宏(本誌担当編集)
 
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デッドストックのコーチジャケットは、いなたいブルーに惹かれて。「ゴールドウイン」の書体もやや古めかしくて懐かしい。
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大山岬の初段のコースを軽々と登っていく中嶋徹さん。スパイダーマンみたいだった。
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大山岬にいた猫は、人懐っこいの域を超えて、僕らのレンタカーに乗車。この猫の例に漏れず、高知の人は皆優しかったな。


ポパイ No. 866

欲しいもの、したいこと。

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