僕らがメキシコへむかう理由 From Editors 2 No. 868
From Editors 2
僕らがメキシコへむかう理由
アーティストやクリエーターたちがその自由な空気に惹かれて、自然と集まってくる街がある。いっときそれはポートランドだったし、ここ数年はベルリンだろう。が、「ベルリンの次はメキシコシティらしいよ」と聞いたとき、すぐに街のイメージがわかなかった。えーと、タコスとテキーラとピラミッドと…というあまりに浅薄なイメージしか浮かばず、村上春樹さんの著作じゃないけど、「メキシコシティにはいったい何があるというんですか?」状態。知らないからこそ知りたい、見たことがないからこそ見たい、それこそが旅の醍醐味だ、と取るものも取り敢えず、メキシコシティへと向かった。
到着からの2週間は驚きと発見の連続。美術館の数がパリと並んでトップクラスで、スケートやファッション、パンクなどのユースカルチャーが盛り上がっていて、リソグラフや版画といった日本人にもなじみ深いカルチャーもある。そして実際にNYやLAからアーティストがどんどん移住していて街に活気があることこの上ない。さらには新しいものだけではなくて、数千年続く民族文化、16世紀のスペイン入植以降の文化もきちんと引き継いでいる。スペインのバロック建築をバックに、トラックバイクやキックボードが疾走する姿はある種、突き抜けた光景だった。
とここまで書いてみて、伝えたいことがあれもこれもあって、まとまりのない自分に気がつく。が、もしかして、整理しきれないその豊饒さや多様さ、余白の大きさこそが、メキシコの魅力なのかもしれない。アジアでもアメリカでもヨーロッパでもない、ここにしかない世界。ぜひ、自分の目で、耳で、体で感じに行こう。
斉藤和義(本誌担当編集)