マガジンワールド

ロンドンでリアル・ドレス・スタイルを採集してきました。 From Editors 2 No. 870

From Editors 2

ロンドンでリアル・ドレス・スタイルを採集してきました。

ヘルシー・ブレイク、ウォーン・イン、ウインター・ホワイトなどなど、辞典に載らないファッション用語を次々と発明してきたニューヨーカーのモデカイ・ルビンスタイン氏。ここ数年のファッション特集では何気にいつも登場してくれています。冗談混じりの語り口で、本気で受け止めていいのか分からない言葉が多いので、「この人は一体なにもの?」という謎をいつも残してきました。そんな彼に、今回はロンドンに飛んでもらうことにしました。いわく、ニューヨークのクラシック・スタイルはいま停滞気味で、街にもドレス・スタイルは皆無だというのです。「ドレスが足りない」と超マジメな顔で語りながら盛大にタイダイ染めのTシャツを着ているモデカイ氏。それではダメだということで、リアルなドレス・スタイルを探しにロンドンへ。今度こそ、ニューヨークのファッション・コンサルタントといえばモデカイ・ルビンスタイン! という印象を日本全土に轟かせることができるのでしょうか? 中身は特集内「SARTORIAL STUDY IN LONDON.」にて確かめていただきたいと思いますが、彼がいつになく本気だったことはここにしっかりと記しておきたいと思います。
大好きなバーリントン・アーケードについては、「このアーケードは今や閑古鳥が鳴いているなんていうヤツもいる。だが俺は次も必ずここへ戻ってくる。昔から変わらず好きな店があるし、これからも変わってもらいたくない。俺は流行のスタイルも好きだが、クラシックなものは常に変わらず、決して間違わない。いつも立ち返るのは、このようなクラシックなストリートだ。ほら、〈バブワー〉でオイルドジャケットを買ったばかりの紳士とすれ違った。間違いなくマイメンだ」。スタイル提案のために香港から〈ドライデン〉のテニス・セーターを取り寄せたり、早朝から深夜まで街を歩き続けてストリート・スナップをしてくれたり。〈パレス スケートボーディング〉のメンバーに事前にアポイントをとろうとしたら、「会ってみないと、撮影したいかどうか決められない」と至極全うな意見で編集チームを困らせたり。突然の訪問に快く応じてくださったチャーリー・ケイスリー・ヘイフォード氏、『ヘンリープール』ディレクターのサイモン氏、『パレス スケートボーディング』のナゲット氏、グラフィック・デザイナーのファーガス・パーセル氏には、あらためて感謝しなくてはなりません。
とある夜、ロンドンの人気レストラン『セント・ジョン』で食事をしていました。すると、いつも人の3倍は周囲に注意を払っているモデカイ氏が、店の端の席に映画監督のウェス・アンダーソンがいることを知らせてくれました。そして言いました。「いいか、映画の『ザ・ロイヤル・テネンバウム』に出てくるモルデカイって鷹はオレなんだぜ。ウェスが何度も俺のところにリサーチに来たんだ」。信じるかどうかはあなた次第。

矢野一斗(本誌担当編集)
 
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プレ・フォールにはテニス・セーターだ! と豪語するモデカイ氏。チルデン・ニットにショーツって新鮮。
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「マメーン!」と叫びながらおじさんをスナップ。解説はぜひ本誌にて。
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ロンドン滞在中はウィンブルドン選手権も開催中だったので、会場でスナップも敢行。「俺はテニスには興味がないが、テニスのスタイルは大好きだ」と語り行き交う人々に目を光らせていました。


ポパイ No. 870

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