先生が教えてくれた、大事なこと。 From Editors 2 No. 878
From Editors 2
先生が教えてくれた、大事なこと。
新しいことに挑戦するのは、なんであれワクワクするもの。今回の「料理」というテーマも、POPEYEの長い歴史の中で、一冊丸ごとというのは初めて。取材先で見ること、聞くことすべてが新鮮で、特集を作っている僕自身が勉強になることばかりでした。特に印象深かったのが、土井善晴さんと、DJみそしるとMCごはんさん(以下、おみそはん)の対談。「コンビーフはあかんやろ!」と土井先生が開口一番、おみそはんの作った味噌汁をディスったのも衝撃だったけれど、「料理は頭を使って考えたらダメ、心で作るもんやね」という一言に、やれレシピだの、やれ分量だの、細かなことばかりに縛られながら、まるでパズルでも組み立てるように料理をしていた自分が、恥ずかしくなりました。「料理に正解なんてない、自分の好きに任せてクリエイトするものなのだ」。さすがは土井先生! 一言の持つ強さが違うなぁ。
直接取材することがなかなか難しい状況でも、NYやコペンハーゲンの有名シェフ、まるでプロレスラーな、カナダのマッティ・マセソン、俳優のダニー・トレホまで、文明の利器に頼りながら、国内外から集めた料理にまつわるあれこれ。彼らから聞いたたくさんのレシピが載っています。そのまま作ってもいいのですが、できたら自分なりにここはこうしたほうが僕は好きかも? なんてアレンジしながら料理を楽しいんでもらえると嬉しいです。レシピはあくまで地図であって、トリセツではない。対談を通じて、『ベスト・キッド』のミヤギにも、ブルース・リーにも見えてきた土井先生の、「考えるな、感じろ」の精神で、この一冊を片手にキッチンに立っていただけたらと。おみそはんが持っていた、ボロボロに使い込まれた土井先生の著書のように。
また、いつの日か素敵なレストランに行く時のためのブックインブック「GOOD MANNER BOOK」も。絵本感覚で楽しんでもらえたらと、堅苦しいルールではなく、こんな時にどうすれば素敵か? というアイデアを一冊にまとめました。これはテーブルマナーにも、料理にも共通することですが、大事なのは「自分も含め、みんなが心地よいと思うことをすること」。今号に費やした3ヶ月間を通じて、僕が得たこの教訓は、ごくごく当たり前のこと。でも、料理に限らず、こういうことが大事なんだなぁとあらためて。