マガジンワールド

みやげもんコレクション 214 彦一こま

熊本県/八代郡
文 / 川端正吾

彦一こま

熊本県民なら誰もが知るとんち物語の玩具。

熊本県八代地方には「彦一とんちばなし」という民話が残っています。彦一とは話の主人公で、江戸時代に八代城下に住んでいた少年。殿様が押しつけてくる難題や、化け物たちのいたずらを、とんちを使って次々に解決していく空想上の人物です。一休さんや吉四六(きっちょむ)さんと並び、日本三大とんち話の一つにも数えられています。「彦一とんちばなし」のなかでは、吉四六ととんち対決をして、彦一が見事勝利しています。 吉四六のとんち話の方では、吉四六の勝ちになっていたりもするのですが……。このあたりは吉四六の地元・大分と熊本のライバル関係がよくわかりますね。

さて、そんな熊本の人気者、彦一のとんち話をモチーフにしたみやげもんが、この「彦一こま」。物語のなかで、旅人に化けて彦一を化かそうとして、逆に化かされてしまうタヌキがモデル。旅人に扮するための小道具であった笠をはじめ、頭、胴、台と尾を分解することができ、それぞれがコマになって回して遊ぶことができます。昭和初期に生まれた玩具で、現在は2代目の井芹眞彦さんがろくろを挽いて製作を続けています。

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写真上/彦一こま(大)1,300円(熊本県伝統工芸館☎096・324・4930)。写真中/それぞれがコマとして回るよう慎重にろくろ挽きされた部品たち。写真下/絵付けに用いるレコードプレーヤーを改造したろくろ。


 

掲載:BRUTUS#809 (2015年10月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。