マガジンワールド

鯛車 みやげもんコレクション303 BRUTUS No.898

みやげもんコレクション 303鯛車

新潟県/新潟市
文 / 川端正吾

鯛車16,200円(鯛の蔵 taiguruma@gmail.com、日曜のみの営業)。

新潟のお盆に欠かせない風物詩の鯛。

新潟市西蒲(にしかん)区では、お盆になると子供たちが鯛車(たいぐるま)を引いて町を歩くという習慣が江戸末期より続いていました。鯛車とは、竹で組んだ骨組みに和紙を張り込み、赤い蝋で色をつけた鯛に、木製の車輪をつけた玩具。中にろうそくを入れて火を灯します。かつては、造花屋や籠屋(かごや)が作って売っていました。これを浴衣姿の子供が引く姿はお盆の風物詩で、昭和30年代までは行われていました。しかし、やはり時代の流れにより徐々に廃れていき、約30年前に最後の鯛車職人が亡くなったことで、途絶えてしまいます。そこで2004年から市民の有志により「鯛車復活プロジェクト」が発足し、見事に復活。現在は、戦前に建てられた旧町役場の蔵を改装した工房兼ギャラリー〈鯛の蔵〉もオープン。鯛車の製作ワークショップや販売などが行われています。

もともと鯛車は、新潟の各地に伝わっており、新発田(しばた)のように鯛から金魚に替わったものもあります。子供たちに引かせるようになった由来はよくわかっていませんが、鯛の赤色にちなんで疱瘡除(ほうそうよ)けとしている地域も多かったようです。

image
image
写真上/鯛車16,200円(鯛の蔵 taiguruma@gmail.com、日曜のみの営業)。写真中/盆に鯛車を引いて墓参りをする子供。写真下/かつては鯛だけでなくスイカをモチーフにしたものもあった。


 

掲載:BRUTUS#898 (2019年8月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。