マガジンワールド

美江寺の俵鈴 みやげもんコレクション 256 BRUTUS No.851

みやげもんコレクション 256美江寺の俵鈴

岐阜県/岐阜市
文 / 川端正吾

俵鈴(美江寺☎058・262・6793)。

その音で厄災をはらった蚕の守り鈴。

国の重要文化財にも指定される乾漆十一面観音立像を本尊とする岐阜市の美江寺。この地域はかつて養蚕が盛んで、あらゆる生き物を救うとされる観音菩薩の信仰が広く浸透していました。戦後、養蚕は廃れてしまいましたが、それでも平成20(2008)年までは、毎年3月の第1日曜日には、『お蚕祭』と呼ばれる祭事が行われ、猩々を乗せた山車が巡幸していました。猩々(しょうじょう)とは、赤い顔、赤い髪をした猿のような妖怪で、赤は厄除けの効果があると信じられていたことから、蚕を守るための守護神として、山車(だし)に飾られていました。現在は残念ながらお祭りは終了しています。

そんな美江寺で授与されているのが「蚕鈴」とも呼ばれている土鈴(どれい)です。「福鈴」とも呼ばれ、養蚕をしていた農家の蚕棚にこの土鈴を吊しておくと蚕がよく育ち、ネズミの害から守ってくれると信じられていました。現在は美江寺の授与品となっていますが、かつて、お蚕祭には、この蚕鈴を売る露店が立ち並んだそうです。最も有名なのは宝珠鈴(ほうじゅれい)(写真下)ですが、ほかにも俵鈴(写真上)や釜鈴など、様々な種類があります。

image
image
写真上/俵鈴(美江寺☎058・262・6793)。写真中/乾漆十一面観音立像を祀る本堂。写真下/土鈴愛好家の間では全国的に有名なアイコニックな作品である宝珠鈴。宝珠に干支があしらわれたものも。


 

掲載:BRUTUS#851 (2017年8月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。