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子授け人形 みやげもんコレクション346 BRUTUS No.941

みやげもんコレクション 346子授け人形

宮城県/仙台市
文 / 川端正吾

子授け人形(定義如来西方寺☎022・393・2011)。

平家ゆかりの寺院に伝わる子授けの習慣。

 仙台市にある〈定義(じょうぎ)如来西方寺〉は、壇ノ浦の戦いに敗れた平貞能(さだよし)が源氏の追手から隠れた場所といわれる、平家ゆかりの寺院です。その際、中国の五台山から伝わった阿弥陀如来の掛け軸を携えており、遺言として、墓上にその掛け軸を祀(まつ)るように言い残したことが、定義如来西方寺の起源といわれています。また、貞能はこの地では定義と名乗っていたことから、その名が寺院名に今も残っています。

 そして、この定義如来西方寺は、古くから子授けのお寺としても知られており、「子授け人形」の風習があります。ろくろ挽きされた小さな木の人形で、緑色の胴の男の子と、赤い胴の女の子があり、これが本堂にずらりと並んでいます。まず参拝者は人形の前で合掌します。そして後ろを向き、そのまま利き手と反対の手で、最初に触った人形を1体掴(つか)みます。それをお借りして、家にお祀りし、子供ができたあかつきには、寺務所で新しい人形を1体授与していただき、2体返納する、というもの。また、安産枕という風習もあり、これも同じように借りて帰り、無事出産したら、新しいものを手作りして返納します。

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写真上/子授け人形(定義如来西方寺☎022・393・2011)。写真中/本堂に奉納されている多数の子授け人形。写真下/同じく本堂に奉納されている安産枕。共に借り受け、祈願成就ののちに返納する。


 

掲載:BRUTUS#941 (2021年7月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。