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雪入道 みやげもんコレクション278 BRUTUS No.873

みやげもんコレクション 278雪入道

岐阜県/高山市
文 / 川端正吾

雪入道 大 2, 000円、中1,600円、小1,300円(奥井木工舎  http://mainichi-kot sukotsu.jimdo.com)。

雪深い奥飛驒の闇夜を飛び回る一本足の妖怪。

雪深い奥飛騨には、雪夜に一本足で飛び回る「雪入道(ゆきにゅうどう)」という妖怪の伝説があります。雪の上に点々と大きな片足の跡が残り、途中でぷっつりと消えてしまう、というお話です。昔は、悪さをすると「一つ目の恐ろしい雪入道に連れていかれてしまうぞ」と子供は言い聞かされたのだとか。今回ご紹介するのは、この雪入道をモチーフにした木彫り玩具です。

製作を行っているのは高山市にある奥井木工舎(おくいもっこうしゃ)。「有道(うとう)しゃくし」という汁用の木製杓子(しゃくし)を作っている工房で、「この杓子の木片を利用してなにか作れないか?」という思いから生み出されました。木杓子を作る際に使う鉈(なた)で成形され、鉈跡や木目が生かされています。また、その風合いを邪魔しないように、彩色は最小限で表現されており、魔除けの意味を込めて朱色をアクセントに使った意匠に。子供を守ってくれる魔除けとして製作され始めてから、まだ1年余りの新しい玩具です。飛騨産ホオノキの香りとともに、その土地の風土や習俗を伝えてくれる素敵な玩具に仕上がっており、いつしか飛騨に根づいた郷土玩具となりそうです。

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写真上/雪入道 大 2,000円、中1,600円、小1,300円(奥井木工舎 http://mainichi-kotsukotsu.jimdo.com)。写真中/鉈や包丁を使い成形されるホオノキ。写真下/最低限の彩色で表現。


 

掲載:BRUTUS#873 (2018年7月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。