姫だるま みやげもんコレクション296 BRUTUS No.891 | Miyagemon | マガジンワールド

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姫だるま みやげもんコレクション296 BRUTUS No.891

みやげもんコレクション 296姫だるま

大分県/竹田市
文 / 川端正吾

姫だるま1,500円(千石や☎0974・62・ 2046)。

実在の武家の女性がモデルとなった家庭円満を願うだるま。

江戸初期に実在した武家の女性、綾女(あやじょ)をモデルにして作られたというのが、大分県竹田(たけた)市に伝わる郷土玩具「姫だるま」です。綾女は下級武士であった雑賀(さいか)某の妻でしたが、姑(しゅうとめ)との争いが絶えませんでした。雪のある日、綾女が所用で遅くなって帰宅したところ、姑から閉め出されます。綾女は、雪に埋もれながらも門前で待ち続け、その姿に心打たれた姑は急ぎ介抱し、以来、仲睦まじく暮らしました。その後、夫は昇進し、家も繁栄したそう。そんな逸話から家庭円満の象徴として彼女をモチーフにしただるまが作られました。

また、地元では、かつて、すべての家が円満であるように、正月に姫だるまを各家庭に配って回る「投げ込み」という風習がありました。配られた家は、彼らに祝儀を渡して姫だるまを受け取り、床の間や神棚に飾ったそうです。戦後、姫だるまは廃絶してしまいますが、昭和に入り復元され、いくつかの工房で作られています。この姫だるまは、市内の和菓子屋〈千石や〉さんで作られている姫だるま。2代にわたり、100年以上この姫だるまを作り、伝えています。

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写真上/姫だるま1,500円(千石や☎0974・62・2046)。写真中/着色前のだるま。手貼りによる表面の凹凸が素朴な味に。写真下/サイズは一番大きなものが50㎝、小さなものが5㎝となる。


 

掲載:BRUTUS#891 (2019年5月1号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。