マガジンワールド

みやげもんコレクション 226 願満の鯛

千葉県/鴨川市
文 / 川端正吾

願満の鯛(中)
3,000円(誕生寺☎04・7095・2621)。

病気平癒を叶える、日蓮聖人の化身。妙の浦の鯛。

千葉県鴨川市小湊は日蓮聖人生誕の地で、聖人が12歳まで暮らした生家跡には誕生寺が建立されています。2度の大津波により場所は移転しましたが、現在も日蓮宗の大本山として全国から信徒が参拝に訪れています。

漁師の子として生まれた日蓮聖人は、誕生の際に3つの奇妙な出来事が起こったといわれています。1つ目は家の庭先に清水が湧き出たこと。2つ目は生家の目の前にあった海岸に、青蓮華の花が咲き誇ったこと。3つ目は、妙の浦の海面に無数の大鯛、小鯛が集まってきたこと。これが日蓮聖人誕生時の奇跡として伝わる「三奇瑞」です。そのため、今でも小湊では、妙の浦に棲(す)む鯛を日蓮聖人の化身として神聖視しており、漁師もここの鯛を獲りません。また、本来、マダイは深海性で群れをなさない習性を持つにもかかわらず、海面近くの深さに群れで生息している例は非常に珍しいため、国からも特別天然記念物として保護されています。この鯛を模した張り子細工が今回ご紹介する「願満の鯛」。日蓮聖人の化身である鯛が病気平癒などの願いを叶えてくれると信じられている縁起物です。

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写真上/願満の鯛(中)3,000円(誕生寺☎04・7095・2621)。写真中/日蓮宗大本山、誕生寺の山門。写真下/願満の鯛の逆サイドは真っ黒な目。願いが叶えば、同様に白い方の目も黒く塗りつぶすのだそう。


 

掲載:BRUTUS#821 (2016年4月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。