みやげもんコレクション 177 川上六所神社の木鷽
福岡県/糸島市
文 / 川端正吾
川上六所神社のミステリアスな真紅の木鷽。
それぞれの神社ごとに個性豊かな造形のものがあり、ついつい各地を巡っていろいろ集めたくなってしまう木鷽。もしかしたらこの連載にこれまで一番多く登場したかもしれない縁起物です。鷽は、スズメ科の野鳥でその名前が「嘘」に通じることから、これまでにあった凶事などを嘘に変え、今年を幸せの多い年にしてくれる、と信じられているもの。鷽替え神事の日には、各地の天満宮に木や焼き物でできた鷽を授与してもらいに行き、参拝者同士で交換したり、古い鷽を神社に納めて新しい鷽に交換したりして、鷽を替えます。そんなすっかりお馴染み感のある鷽ですが、今回登場する川上六所神社の木鷽は、これまでの鷽像を刷新するほどの強力なインパクトが。なにせご覧の通り、真っ赤に塗られた木の枝に、白丸が描かれただけ。その理由は、かつてこの神社では鷽ではなく焼き物の赤い「宝珠」を交換して鷽替えを行っていたから。その宝珠の面影を残しつつ後年木鷽が作られたため、こうした意匠になったのだとか。毎年3月の初午の日に行われる鷽替えには、多くの人が集まり、木鷽をいただいて帰ります。
掲載:BRUTUS#772 (2014年3月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。