みやげもんコレクション 178 藍搗きお蔵
徳島県/徳島市
文 / 川端正吾
藍搗きの音が響いた古き良き徳島の農村をしのぶ玩具。
徳島は古くから藍染めに使う染料、蒅が盛んに作られ、「阿波藍」として各地に出荷されていました。穂が出る直前に刈り取った藍の葉を乾燥させ、土蔵の中で寝かせて発酵させ、臼で玉状に搗き固めたものが蒅となります。そのため、農家には、住まう母屋より大きな白壁造りの土蔵が立ち並びました。この蔵をかたどった玩具が、「藍搗きお蔵」です。昭和初期に考案された玩具で、乳児がよちよち歩きだす頃になると、この玩具を引かせ、カタカタと順番に杵が動く様子を見せて遊ばせたそうです。かつては市内の新町川両岸には、こうした藍搗きのお蔵が立ち並んでおり、船で県外へと積み出していたのですが、戦災によってすべて焼けてしまい、今は見る影もありません。この玩具にのみ当時の面影が残っています。このお蔵を製作する後藤人形館は、人形浄瑠璃で使う木偶を作る工房なだけあって、こうした木製玩具はお手のもののよう。ほかにも勇壮な秋祭りで知られる四所神社の山車を模した玩具「ヨイヤショ」という玩具も作られており、こちらも徳島を代表する玩具の一つです。
掲載:BRUTUS#773 (2014年3月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。