みやげもんコレクション 203 かしゃ猫
福島県/大沼郡
文 / 川端正吾
恐ろしい化け猫の伝説から生まれた、会津の魔除けこけし。
福島県の会津地方は、化け猫にまつわる伝説がとても多く、この「かしゃ猫」もそんな昔話の一つが由来となって生まれた木彫の郷土玩具です。
古くから霊山として知られる志津倉山(しづくらやま)に、化け猫が棲(す)みつきました。この猫は100日雨を降らせたと思ったら今度は100日日照りを続かせるなどしたうえに、ひどい疫病を流行らせて、まだ若い人間を死に至らしめ、その骸(むくろ)をむさぼることで自分の余命を延ばすという手のつけられない厄介者でした。これを聞きつけて助けに馳せ参じたのが、あの弘法大師・空海です。志津倉山に自生するコシアブラの木の枝を振るって退治し「これからはお前のその魔力を使って、天の災いに苦しむ人々を救い、人の病を癒やす、志津倉山の主となれ」と諭したのだとか。以来、化け猫は天災や疫病から人々を守る魔除けの神として崇められるようになりました。そんな逸話から、この地方では子供が生まれるとコシアブラの木で猫のこけしを作って遊ばせるようになり、郷土玩具となったといわれています。なにせ、このドヤ顔ですから、なにかしら御利益なかったらウソですよね。
何度か中断しながらも今に伝わるかしゃ猫。現在は大沼郡三島町にある工房〈夢紡匠庵〉(☎0241・52・2305)にて製作されている。枝ぶりにより多様なサイズあり。かしゃ猫(約20㎝)2,000円。
掲載:BRUTUS#798 (2015年4月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。