寒水のガラガラ みやげもんコレクション 270 BRUTUS No.865
みやげもんコレクション 270寒水のガラガラ
佐賀県/佐賀市
文 / 川端正吾
愛好家の執念により蘇った幻のガラガラ。
佐賀県三養基(みやき)郡の東寒水(ひがししょうず)あたりでは、800年以上前から土鈴が作られていました。その土鈴は、律令時代、官命によって出張する者に、その証しとして渡された鈴である「駅鈴」を模したものでした。ここで作られた土鈴は、主に福岡の英彦山(ひこさん)神宮で販売され、以前ご紹介したこともある土鈴の名品「英彦山ガラガラ」の元となったともいわれています。しかし、ある年、英彦山神宮で火災が起きた際、その直前に猿が出没していたことから忌み嫌われ、以来、猿にまつわる縁起物は一切販売禁止となってしまいました。寒水の土鈴も猿がシンボルになっていたため、売ることができなくなり、廃絶してしまいます。
以来、現在にその姿を伝えるものがほとんどなく、しばらくの間、幻の土鈴となっていました。ところが30年前、この土鈴を追い続けた地元の郷土玩具愛好家の手により昔の土鈴が発見され江戸時代の儒学者が記した書物に色つきの挿絵と、土鈴に関する記述が発見され、その本当の姿がわかるようになりました。これらの資料を基に復元がなされ、ついに現代に蘇ったのです。
写真上/寒水ガラガラ各2,000円(佐賀一品堂☎070・5276・2797)。写真中/郷土玩具愛好家の方が発見した、かつての土鈴。これらも復元の資料として使われた。写真下/製作中の寒水ガラガラ。
掲載:BRUTUS#865 (2018年3月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。