狛蛙 みやげもんコレクション279 BRUTUS No.874
みやげもんコレクション 279狛蛙
埼玉県/富士見市
文 / 川端正吾
名水で知られた富士見の社を守る阿吽の蛙像。
埼玉県富士見市は、かつて豊富な湧き水の土地として知られていました。この地に鎮座する水宮(みずみや)神社の境内には、水にちなんでか、狛犬ではなく“蛙”がモチーフの“狛蛙(こまがえる)”が鎮座しています。その昔、「人間のように立って歩きたい」と願った蛙がいた、という逸話に由来しているそうで、その蛙は、願掛けのおかげで二本足で歩けるようになります。ところが、立ってしまうと蛙の目は背中側になってしまい、前が見えないため、うまく歩くことができません。困った蛙は、もう一度願をかけ、「やはり元の姿に戻してほしい」と祈ります。しかし、ころころ心変わりする蛙に怒った神様は、なかなか元に戻してくれません。困り果てていたところ、大日如来がようやく元の姿に戻してくれました。以来、蛙は二度と立って歩きたいとは思わず、狛蛙となって社殿を守っています。もともと蛙は田畑の害虫を食べてくれることから守り神として大事にされてきた存在であり、「旅から無事帰る」や「若返る」などのゴロもよく、縁起物として喜ばれました。この狛蛙も、ミニチュアが授与されており、人気を集めています。
写真上/狛蛙(阿吽セット)2,000円(水宮神社☎049・251・7520)。写真中/5,000年以上湧き続けていると伝わる境内の御神水。ここにも蛙の石像が。写真下/権現造りの本殿前に鎮座する狛蛙の石像。
掲載:BRUTUS#874 (2018年8月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。