尾崎人形 みやげもんコレクション293 BRUTUS No.888
みやげもんコレクション 293尾崎人形
佐賀県/神埼市
文 / 川端正吾
700年の歴史を誇る元寇がもたらした素朴な人形笛。
佐賀県神埼市の尾崎西分地区に伝わる土人形「尾崎人形」は、約40種ある作品の多くが人形笛という、少し変わった玩具です。なんとルーツは、あの元寇(げんこう)でやってきた蒙古軍(もうこぐん)の笛にあるのだとか。伝承によると、弘安4(1281)年の蒙古襲来の際にやってきた蒙古軍兵士が、尾崎地区に落ちのびて、捕虜のようなかたちで暮らしていた際、手すさびで人形笛を作って吹き鳴らし、故郷を懐かしんでいたのだとか。その技術が次第に広まり、この地域で焼き物が盛んに作られるようになったと伝えられています。
人形笛から始まった尾崎の焼き物は、次第に瓦や鉢物を焼くようになり、江戸期には佐賀藩から幕府への献上品にもなりました。しかし、以後は衰退し、尾崎人形も一時は廃絶してしまいました。これを残念に思った地元の有志による保存会が9年前に復活させ、現在も製作が続いています。復元直後にも当連載で紹介しましたが、当時は2種類のみの製作でした。現在では写真上の「長太郎」をはじめとした、尾崎人形を代表するユーモラスな作品が数多く復元され、賑やかになっています。
写真上/右・赤毛の子守、左・長太郎 各1,500円。写真中/右・お相撲さん、左・兵隊さん 各1,500円(尾崎人形保存会☎0952・53・0091)。写真下/尾崎人形を復元した職人の高柳政廣さん。
掲載:BRUTUS#888 (2019年3月15号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。