猫箱 みやげもんコレクション307 BRUTUS No.902
みやげもんコレクション 307猫箱
岩手県/胆沢郡
文 / 川端正吾
張り子を梱包するための紙箱を利用した猫人形。
昭和30(1955)年頃、神楽などに使う木彫面の代用品として作り始められた六原張り子。そのため、多種多様な張り子面のラインナップがあり人気ですが、人形もユニークなものが作られています。その特徴は、地元の伝統和紙「成島和紙」を使い、仕上げの胡粉(ごふん)塗りをせずに、紙の風合いをそのまま生かしていること。淡いベージュがかった地色で、素朴な味わいがあります。また、凹石膏(せっこう)の型に、内側から紙を貼っていく製法のため、表面がとてもなめらかに仕上がることも特徴です。
以前、六原張り子の張り子犬を紹介させていただいたのですが、今回、またユニークな新作が発表されました。なんと、箱をベースにして猫の人形を作ってしまった「猫箱」です。張り子細工を納品する際に使う紙箱の職人さんから「最近、箱の需要が減っていて困っている」と相談され、箱自体を商品として魅力あるものにできないだろうか? と考えて作り出したそう。思案中に、庭の菊の花の周りを猫がうろうろ歩く様子を見て、このモチーフを思いついたのだとか。また新たな名作が六原に生まれたようです。
写真上/猫箱3,800円(さわはん工房☎0197・43・3397)。写真中/箱の胴体は、もちろん開けることができ、小物入れとなる。写真下/新作の大黒とネズミの張り子。ネズミの頭は首振りに。
掲載:BRUTUS#902 (2019年10月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。