いなり狐 みやげもんコレクション336 BRUTUS No.931
みやげもんコレクション 336いなり狐
山形県/上山市
文 / 川端正吾
手漉き紙にこだわり続ける和紙の里の張り子。
蔵六面工房は、手漉(てす)き和紙を使うことにこだわる張り子細工の工房です。山形県上山市(かみのやまし)は、古くから和紙の里として有名でしたが、その和紙を使って張り子細工を作る職人がおらず、初代・蔵六が「それはつまらん」と昭和53(1978)年からお面や人形を作り始めました。その種類は干支や妖怪、民話の登場人物まで様々。現在作られていないものも合わせると約300種もあるのだとか。現在は2代目蔵六が跡取りとなり、今も手漉きの紙にこだわり、すべて手仕事で張り子作りを行っています。写真上は、先代の頃から作られていた古い型である「いなり狐」。蔵六面工房の作品は、写真下のように、どれも愛嬌あふれるユニークな表情をしているものが多いのですが、その中にあって、すっとした端正な顔立ちが際立つ作品です。
ちなみに、工房名となっている「蔵六」とは、初代が影響を受けた大村益次郎の異名から名づけられました。「田舎をひいきし、上下や価値などに左右されず、物事を自分自身で決める」という益次郎の姿勢を受け継ぎ、今も奔放な作風で楽しませてくれています。
写真上/おとぎ面・いなり狐。2,500円。写真中/盃に形が似た、かわらけ面・赤おに。1,400円。写真下/上山の奇祭『加勢鳥』がモチーフの人形。各1,800円(蔵六面工房☎023・672・3979)。
掲載:BRUTUS#931 (2021年2月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。