みやげもんコレクション 168 九尾の狐
栃木県/鹿沼市
文 / 川端正吾
箒の切れ端から生まれ出た鹿沼の妖狐。
栃木県鹿沼市は、古くから座敷箒の生産が盛んに行われてきた町。柄と箒の接合部分を蛤型に編み上げた美しい箒は、「鹿沼箒」と呼ばれ、かつては箒の一大産地として栄えました。電動の掃除機が普及する時代になり、箒作りも次第に衰退し、代わりに新しい特産品として考え出されたのが、この「きびがら細工」です。箒職人であった青木行雄氏が、箒を作る際に出る箒きびの廃材、“きびがら”を使って動物などの玩具を作っており、これを商品化したところ、あっという間に愛好家が増え、比較的歴史が浅いにもかかわらず栃木を代表する郷土玩具となりました。きびがらはそのままだと硬くて加工しづらいため、まずは水に浸して軟らかくし、漁の網を作るのに使われる伸縮性がある糸で編み上げながら形を作っていきます。きびがらが乾いてしまう前に、テキパキと仕上げなくてはなりません。きびがらの切り込み角度や、微妙な折り曲げ加減でモチーフの細部を再現し、完成。現在は、十二支や鶴亀など16種ほどが作られています。写真上は九尾の狐。栃木に伝わる妖狐の伝説をモチーフにした作品です。
掲載:BRUTUS#763 (2013年10月1日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。