みやげもんコレクション 205 三豊の虎
香川県/三豊市
文 / 川端正吾
創業時の製法にこだわり続けた西讃の首振り虎。
獣の王である虎の勇猛さにあやかり、健康で力強い男子が育つことを願って、各地で作られている虎の張り子。今回ご紹介するのは、香川県三豊市に伝わる首振り虎です。かつて、市内には3軒の工房がありましたが、今ではたった1軒、田井民芸の工房だけが製作を続けています。体に対してちょっと大きめな頭が特徴で、白塗りの顔の表情もとてもユニーク。また、鋭い牙がここまで再現されている張り子虎も珍しいと思います。
明治元(1868)年創業当時から、その製作方法はほとんど変わっておらず、張り子に使用する紙も江戸後期の寺子屋の手本や明治期の大福帳などの古紙を大量にストックしており、今もそれを使用。和紙は明治中期以前のものが紙質が良く、下地貼りに使うものとはいえ仕上がりが変わってくるのだとか。絵付けも、油煙(蝋燭の煤)を使うなど、創業当時のままにこだわっています。
こちらの地域では、男子の誕生の際では、必ずと言っていいほど、虎が贈られました。現在も数は少なくなってしまいましたが、端午の節句には、男子の成長を祈って虎が飾られます。
江戸時代より人形作りが盛んに行われていた三豊市。田井民芸は明治元年に創業。5代目の田井艶子氏が製作を続けている。写真大/張り子虎(4号)7,000円(田井民芸☎0875・72・4978)。
掲載:BRUTUS#800 (2015年5月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。