みやげもんコレクション 215 おばけの金太
熊本県/熊本市
文 / 川端正吾
おどけ上手の足軽がモデルの奇妙な首人形。
烏帽子(えぼし)を被った真っ赤な首が、木板の土台に据え付けられた、なんともアバンギャルドな姿の「おばけの金太」。熊本に伝わる玩具で、その昔、加藤清正が熊本城を築城した際に、その現場にひょうきんな顔立ちで、人を笑わせるのが大好きな足軽がおり、彼がモデルになったといわれています。足軽は、毎日炎天下で作業をしており、日焼けで真っ赤な顔をしていたとか、酒飲みでいつも赤い顔をしていたとか、はたまた子供の疱瘡(ほうそう)除けのために赤く塗られたとか、赤い顔のいわれはいくつもあります。彼は「おどけの金太」と愛称で呼ばれていたのですが、玩具はそのミステリアスな風貌のせいか、いつしか「おばけの金太」と呼ばれるように。首はからくり仕掛けになっていて、紐を引っ張ると、表情がくるくると変わり、目を見開いた表情や、にやけた表情、そして白目をむいた表情と、3パターンに変化します。同時に舌がベロンと伸び、この舌出しの由来もいくつかあり、意地っ張りである肥後もっこすの心意気の表れであるとか、歌舞伎の題目の一つである舌出し三番叟から来ているという説があります。
おばけの金太を製作する厚賀新八郎氏。初代西陣屋新左衛門以来、250年続く人形師の10代目にあたる。金太を考案したのは5代目。おばけの金太(特小)2,800円(熊本県伝統工芸館☎096・324・4930)。
掲載:BRUTUS#810 (2015年10月15日号)
値段・問い合わせ先などは、発売当時のものです。